タル・ベーラ / サタンタンゴ
黙示録性とディストピア性、ハンガリー社会の寓話としての物語。劇中で実際に黙示録が提示される。
ラストの存在しない教会の鐘の音と医師のモノローグが被さるシーンが美しい。教会の鐘の音とダーク・アンビエント、白痴めいたタンゴ以外の劇中音楽は存在しない。
デヴィッド・リンチへのダーク・アンビエントと長回しを用いたオマージュと廃墟と少女という印象的なシーンでのアンドレイ・タルコフスキーのノスタルジアへのオマージュを観測した。劇中でのダーク・アンビエントの採用はリンチの影響だろうし、映像にノスタルジアの影響がある気がする。
少女が猫と心中するシーンで何故か美しさを感じてしまった。
頭にチーズパンを乗せた男のシーンは諧謔とユーモアの表現なのか?白痴めいたタンゴで村人が踊り狂うシーンが妙な感覚を伴って印象に残っている。それを見つめる少女の姿も。瞳が澄んでいた。
作中で殺される猫は獣医の監督の下で眠らされていただけらしい。安心した。
序盤と終盤で同じモノトーンでもレタッチの色彩とトーンをかなり変えていて、映像に対する繊細さが伺える。後半でリアリズムを強調しているというか。
ストーリーが抱える体制批判からタル・ベーラの反体制性が透けて見える気がする。その辺詳しくは無いが、ハンガリーの現状をある部分表しているのだと思う。
とにかく徹底した長回しの連続。1カットが10分を超える事もあった。その場で起きている事を全てカメラに収めたいという監督の哲学があるらしい。