Music for Orphans

音盤収集記。

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文学

春日井建 / 未青年

「大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき」 「空の美貌を恐れて泣きし幼児期より泡立つ声のしたたるわたし」 「唖蝉が砂にしびれて死ぬ夕べ告げ得ぬ愛に唇渇く」 「太陽が欲しくて父を怒らせし日よりむなしきものばかり恋う」 「くちびるを…

デューナ・バーンズ / いとわしき女たちの書

「たとえあなたを捕え、宇宙から引きずりおろしても その脚がレースの布にからみついて動きが取れなくなったとしても あなたはくちづけで世界を狂わせるのだから うつぶせの姿でも。」 「草の上のあなたの体を見つめる 涼しく淡いまなざし。懸命にあの物憂い…

高橋睦郎 / 待たな終末

「いつかヒト滅び世界も滅ぶればわが言葉いまを輝き滅べ」 「幼な子に世界は言葉 言葉なる世界のめぐり動くもろもろ」 「言葉なる世界と世界なる言葉その鬩ぎにし訪ひこしか詩は」 「沈黙より言葉生まるる草や木の木の影より光現るるさながら」 「七十億滅び…

鷲巣繁男 / 鷲巣繁男詩集

「やがて果樹園を吹き抜けた夜が、伽藍の空洞に化石になるのを待つてゐる天使らを包むとき、蜥蜴の夢だけが、この世の連帯の虹色をステンドグラスに燃やすだらう。」(死者たちへの手帖) 「遠くで角笛がする。羊たちが目覚めるころだ。そして、わたしは凡ての…

塚本邦雄 / 塚本邦雄全集一巻

「くりかえし翔べぬ天使に讀みきかす 白葡萄醒酸製法秘傅」 「湖の夜明け、ピアノに水死者のゆびほぐれおちならすレクイエム」 「てのひらの傷いたみつつ裏切りの季節にひらく十字科の花」 「夜のつぎにくるはまた夜、かなしげな魚の眼の中に燈ともせ」 「翅…

フリオ・コルタサル / 対岸

「今や彼女にはすべて、すべてが可能なのだ。世界は彼女のものなのだから、その気にさえなれば。だが、恐怖と臆病が彼女の喉を締め付ける。魔女、魔女。魔女が行きつくのは地獄。」