地域別に見るブラックゲイズ
この記事ではブラックゲイズのバンドを地域別に纏めていこうと思います。単なるリスナーの個人的見解に過ぎないので間違いや不備など多々あるかと思われます。ご容赦下さい。
・ブラックゲイズのシーンと辺境での点在
ヨーロッパ、フランス、アメリカ、中国、ロシアにはブラックゲイズのシーンが存在する様です。特にロシアと中国、フランスとアメリカが盛んな印象で、ロシアはサンクトペテルブルグにシーンが存在し、中国はブラックメタルの名門レーベルPest Productionを中心にバンドが集まっており、フランスは言うまでも無いと思いますが、開祖の一つであるAlcestが存在します。その他の地域はバンドの点在を見るとシーンが存在する様にも思えますが、独りブラックメタル的な方法で創作するミュージシャンの多さを考えると個人の独創で成り立っているのでは?との考えもあり判断が付かないというのが正直な所です。詳しい方がいらっしゃったらご教授下さい。
・アメリカ
・Carrion Cathedral
カリフォルニア産ブラックゲイズ。徹頭徹尾荒々しく乾いた轟音とDeafheaven文脈のヴォーカルが美しいです。ブラックメタルとの境界線上に位置する様なサウンドで、そちらのリスナーにもアプローチ出来る音楽なのではないでしょうか。
・Holy Fawn
アリゾナ産ブラックゲイズ。ポストロック×シューゲイザー×ブラックメタル的なクロスオーバーと入念に練り込まれたアレンジが素晴らしく、かなりの人気を博している様です。強烈なアンビエンスを内包するヴォーカルとギターがデスヴォイスと融和する様は圧巻としか言えないです。
・It Only Ends Once
テキサス産ブラックゲイズ。Explosions In The Skyがブラックゲイズ化した様なポストロック的な轟音と邪悪な要素をあまり感じさせないヴォーカルが印象深く、壮大で叙情的な楽曲の完成度の高さと相まって素晴らしいブラックゲイズとして顕れています。
https://itonlyendsonce.bandcamp.com/album/chasms-will-never-be-filled
・Nullingroots
アリゾナ産ブラックゲイズ。耽美で内省性を感じさせる楽曲と王道を行くサウンド、幻想文学的なリリックが興味深いです。
・Sadness
イリノイ産ブラックゲイズ。列挙しているバンド群の中でもシューゲイザー的展開に意識的な作家として映るというか、その要素を前面に押し出そうとしている様な印象です。多作でどの作品も遜色が無い出来で現行シーンのトップランナーの一人かと個人的には思ってます。
・イギリス
・Bliss Signal
ロンドン発、Altar of PlaguesのJames KellyとMumdanceによるブラックゲイズ×グライム的なサウンドを誇る先鋭的プロジェクト。グライム由来のトランシーな要素や電子音とブラックゲイズのノイズやカタルシスが高度に融合した凄まじい内容で、リリース当初話題になったのも頷けます。
・Misertus
マンチェスター産ブラックゲイズ。恐らくDeafheavenをルーツとするバンドで、彼ら譲りのブラックメタル的轟音とシューゲイザー的ギターノイズのクロスオーバーが見られます。作品を追う事にシューゲイザー的な方向性を強めており、その方向性から生まれる新作に期待してます。
・フランス
・Marunata
フランス産ワンマン・ブラックゲイズ。歌が前面に押し出されていますが、Alcest等の既存のブラックゲイズとは違う文脈でそれを表現しておりその点に新しさとバンドの固有性があるのだと思いました。漂白されたサウンドやダンジョンシンセの諸作を彷彿とさせるシンセサイザーの採用も魅力的に映ります。
・Morteminence
フランス・ルーアン発ブラックゲイズ。低体温で叙情的な楽曲とDeafheavenを意識したヴォーカル、透明感が強いギターが印象深いです。2018年のデビューでまだアルバムは一枚しかリリースしていないですが要注目だと思います。BandcampにアップロードされているMarilyn Manson / Valentine's Dayのカバーも高水準だし日本語の巧みな挿入も良いです。
・イタリア
・Falaise
トーディ産ブラックゲイズ。デプレッシヴ・ブラックメタル的な抑鬱性とシューゲイザー的な耽美性が溶け合った音楽性はかなりレベルの高いものだと思うし、ピアノの効果的な採用等から来るアンビエンスとギターノイズの調和に美しさを感じました。
・ドイツ
・Trautonist
2014年デビュー、コブレンツ発現行ブラックゲイズ。マルチプレイヤーであるKatharina SerfとDennis Blombergの二者が演奏を務めている様です。和声の感覚が豊潤かつ女性ヴォーカルがリリカルで美しく、初めて聴いて軽い衝撃を覚えました。
・カナダ
・Respire
激情ハードコアの強い影響を感じさせる、エモーショナルで性急かつ硬質なサウンドと楽曲が素晴らしいトロント産ブラックゲイズ。"Waltz"の壮大で優美な楽曲と激情迸るサウンドの美しさは類を見ないというか、激情ハードコア×ブラックゲイズというクロスオーバーに成功しているのではないでしょうか。
・オーストラリア
・Illyria
パース産ブラックゲイズ。自然への憧憬を感じさせる、穏やかさや静謐を内包したポストロックの影響が伺えるサウンドが印象深いです。
・Solar Wanderers
2013年から活動を続けるオーストラリア産ブラックゲイズ。Shelterの時期のAlcestがより轟音になった様なサウンドと入念に練り込まれた繊細な楽曲が魅力的です。
https://solarwanderers.bandcamp.com/
・ニュージーランド
・The Dark Third
オークランド産ブラックゲイズ。ピアノとストリングスの採用も見られる様に、アンビエンス溢れるサウンドとデスヴォイスを多用しないメロウなヴォーカルやメランコリックな楽曲が特徴として挙げられると思います。普段ブラックゲイズを聴かない層にもアプローチ出来るサウンドだと思うし、クラシカルなテイストはあまり見られないのではないでしょうか。
・スペイン
・Apocynthion
・ハンガリー
・black particles
ハンガリーの首都であるブダペスト出身のブラックゲイズ。スクリーモやハードコアパンクの影響を感じさせるエモーショナルなサウンドと高度に完成された楽曲が素晴らしいです。"Regrets"のダークで格好良いリフと楽曲展開は類を見ないものだと思います。
・ウクライナ
・White Ward
オデッサ産ブラックゲイズ。デプレッシヴ・ブラックメタルの強い影響を感じさせつつサックス等を取り入れた前衛的なサウンドや楽曲とボードレールを彷彿とさせる詩世界に耽美性を感じました。
・ロシア
・A Light In The Dark
ポドリスク産ブラックゲイズ。王道を行く叙情的でメランコリックな楽曲とエセリアルなサウンドが素晴らしい人気バンドです。B.M.によるソロプロジェクトであり、独りでの創作による貫徹した世界観も魅力かと思います。
・Olhava
サンクトペテルブルグ産ブラックゲイズ。Deafheavenがシューゲイザーのマインドを持ちつつ更なる轟音になった様なサウンドというか、インパクトと叙情を兼ね備えたバンドであり、陶酔と目覚めが同時に存在する様な感覚で素晴らしいです。
・Somn
サンクトペテルブルグ産ブラックゲイズ。傾向としてはOlhavaに近いDeafheaven的なギターの轟音を主軸に置いたバンドですが、比較的ダーティーな感覚が魅力的なOlhavaと比べるとよりクリーンな印象です。まだセルフリリースのデジタルアルバムを一枚しかリリースしていないので今後の展開に期待出来るのではないでしょうか。
・中国
・Asthenia
恐らく中国産ブラックゲイズの中でもかなりの水準を誇ると思われる北京のバンド。名門レーベルPest Productionからリリースされた2ndアルバム、Nucleationは(存在するのなら)ブラックゲイズ史に残る名盤だと思います。ブラックゲイズとしては異色と言えるハイファイなサウンドや洗練された楽曲は突き刺さる様な叙情と聴き易さを兼ね備えていて、取っ掛かりとしても優れているのではないでしょうか。
・ブラジル
・Shyy
サンパウロ産ブラックゲイズ。メランコリー漂う楽曲と少しポストロックの影響を感じるサウンドが魅力的です。兎に角楽曲の完成度が高く、轟音の合間に繊細な展開が挿入される様が良かったです。
・イスラエル
・Ketoret
エルサレム産ブラックゲイズ。耽美かつダウナーでスローな楽曲とアンビエンスが豊かで奥行きのあるサウンドが魅力的なバンドだと思います。2019年デビューとの事なので今後の活動に期待出来るのではないでしょうか。