シューゲイザーについての私的雑感とレビュー
この記事ではシューゲイザーについての個人的な雑感とレビューを綴っていきたいと思います。単なる一シューゲイザーリスナーの見解に過ぎないですし、歴史を体系的に纏める為の記事でも無いので抜けや不備、間違いが多々あると思われます。悪しからず。
・初期シューゲイザー、黎明期。
ルーツについては諸説ありますが、リリース時期を考えるとMy Bloody ValentineのEcstacyが初めてリリースされたシューゲイザーの音源という事で間違いないと思います。そう考えるとMy Bloody Valentineが起源という説が個人的には正しい様に思えます。それ以前のルーツを考えると、RamonesやBuzzcocksのパンクなエネルギーとポップセンスやHeavenlyとAnother Sunny Dayに代表されるSarah Records一派のサウンド、Brian Eno辺りのアンビエントが挙げられると思います。特にSarah Records一派の影響は前述したEcstacyに顕著ですね。EP'sに収録されている作品以降は明確にアンビエントを意識している様に思います。
・My Bloody Valentine
極彩色のディストーテッドされた轟音ギターと強烈なアンビエンス、甘美で耽美な楽曲群のポップネスと一種の宗教的至高性。歌詞がファジーなのは楽音に意識を向けさせる為なのだと思われます。Lovelessはシューゲイザー史上の不動の金字塔であり、今なお輝き続ける名盤だと個人的には思います。影響元として挙げられるのはRamonesとSarah Recordsから作品をリリースするHeavenlyでしょうか。アコースティックギターの優しさを見るとHeavenlyの優しく穏やかな楽音の影響を受けているのが伺えます。
・Loveless
・EP's 1988-1991
タイトル通りEPを集めた編集盤なのですが、My Bloody ValentineはEP事に楽曲のテイストを全く変えており、結果的に多様性に満ちた音源になっています。Cigarette in Your Bedで見せる強烈なエロスの表現はシーン全体を見渡しても類を見ないと思います。このアルバムを聴いていていつも思うのですが、ディストーテッドされたギターに注目が集まるケヴィン・シールズですがアコースティックギターの演奏も完璧だなと。Don't Ask Whyでのアンビエンス溢れるギターの演奏が忘れがたいです。
・Chapter House
イギリス・レディングで結成された伝説的シューゲイザーバンド。清涼感とエネルギーに満ちた演奏とUK感溢れる楽曲が僕が言うまでも無く素晴らしいです。現在のUKロックに与えた影響は計り知れないと思います。当時は酷評されたらしいですが、Blood Musicでの打ち込みの採用も今聴くと格好良いですね。ビートが比較的フィジカルで踊れるとの評判らしいです。完全な余談ですが、別のウェブ記事でも言及されているのですが彼らは当時のレディングフェスを観て育ったのでしょうか。羨ましいです。
・Ride
イギリス・オックスフォードにて1988年に結成されたシューゲイザーファンなら誰もが知る名バンド。透徹した浮遊感溢れるサウンドと完成された楽曲が素晴らしいです。2nd以降はシューゲイザーと言うよりはインディーロックな作風で近作もシューゲイザーでは無いですが、現在のライヴは紛う事無き完璧なシューゲイザーでした。
・Slowdive
漂白された耽美性溢れる轟音とシンプルながらリリシズム溢れる歌詞、強烈なアンビエンスと美しいツインヴォーカルが特徴的な初期シューゲイザーを代表するバンドですね。個人的に90年代からずっと愛聴していて思い入れが深いです。
・Blue Day
EPとシングルを纏めた編集盤。このアルバムがSlowdiveのパブリックイメージに近い音楽性に近づいた時期というか、転換期に当たるのだと思います。個人的にはShe CallとLosing Today辺りが白眉だと思います。内省と漂白された轟音、特有のリリシズムと純白の光景。
・Pygmalion
アルバム屈指の名曲であるCrazy For Youが個人的な彼らのベストソングです。他者への愛を反復するだけの歌詞がここまで美しく響くのは楽音の成せる業でしょうか。ミニマリズムとノイズが削ぎ落とされたギター、甘美な歌唱と他者への愛の反復。
・Pale Saints
1987年結成、UK発のシューゲイザーバンドでありオリジネーターの一組。耽美な楽曲群と楽音が素晴らしいです。昔から良いバンドだとは思っていたのですが、2020年のリマスターでその真価が発揮された印象があります。高音質化によってバンドが抱える耽美性が一層際立ったので。4ADを象徴するバンドの一組でもあると思います。
・A.R. Kane
あまり有名では無いですが、オリジナルシューゲイザー世代の一組でベースミュージックとシューゲイザーのマッシュアップの先駆です。ジャングルやハウスとのマッシュアップ路線も良いですが、個人的にはダークなテーマを推し出す初期EPであるLollitaが好きで折を見て聴き返しています。余談ですが、メンバーに黒人を有しているバンドは彼ら以外思い当たらないです。近年の復活が目出度いですね。
・1990年代、第二世代のシューゲイザー
この時期がシューゲイザーの第二世代、MBVやSlowdive以降のバンドと言う事になるのだと思います。シューゲイザーの本質的な意味での多様化が始まった時期だと個人的に認識しています。付け加えるとコクトーツインズやAlison's Haloの登場を顧みてもこの時期にドリームポップへの種が蒔かれた様に思います。
・Alison's Halo
1992年結成、アリゾナ産シューゲイザーバンド。浮遊感溢れる耽美な轟音と何処までも甘いヴォーカルが印象深いです。憶測ですが、インディーポップ路線のシューゲイザーの先駆けなのだと思いますし、ドリーム・ポップの一つのルーツなのだと思います。
・All Natural Lemon and Lime Flavors
Steleolabの影響が顕著な1990年代後半に活躍したシューゲイザーバンド。強烈なサイケデリアを伴ったMBV的な轟音の海に飲み込まれます。個人的には1stアルバムが好きです。
・The Autocollants
1996年に結成されたインディーポップ的なサウンドと楽曲が美しいTears Run Ringsの前身となったバンド。このバンドもインディーポップ路線の先駆けかと思います。シューゲイザーには珍しいトランペットの採用が印象的です。
・Colfax Abbey
エモーショナルで何処か冷たいサウンドと音楽的なセンスの高さや意匠を感じるスケールの大きい楽曲群が素晴らしいです。ジャンルは違いますが、Sunny Day Real EstateのRising Tideの冷たさに通じる様に思います。共通しているのはキリスト教信仰の冷たさでしょうか。
99youtu.be
・Curve
ロンドン発、大胆な当時のベースミュージック的要素の採用が鮮烈で印象的な1990年代に人気を博したシューゲイザーバンド。Already Yoursは今なお古びない名曲だと思います。ギタリストは今もSPC ECOで自身の娘と共に活動しています。
・Drop Nineteens
ボストン発、1991年デビューのシューゲイザーバンド。当時はUSのバンドは珍しかったらしいです。繊細でノイジーなギターが美しいです。Madonnaの「Angel」のカヴァーが何処までも美しく、この曲ばかり聴いてしまいます。あの楽曲がここまで抒情的で耽美に変貌する所にシューゲイザーの素晴らしさを感じますね。
・half string
1996年に a fascination with heightsでデビューしたアメリカが誇る名バンド。2012年にCaptured Tracksから編集盤がリリースされてまた脚光を浴びましたね。その編集盤も良いのですが、前述した a fascination with heightsが珠玉の名盤で90年代という時代を考えると異色の出来だと思います。現在は入手困難なのが残念です。
・Lilys
MBV直系のドリーミーな轟音とウィスパーなヴォーカルが最高に気持ち良い良質なシューゲイザー。インディーロック路線のセルフタイトルのアルバムも良質ですが、ここではシューゲイザー路線のIn the Presence of Nothingを取り上げようと思います。Tone Bender後半のリズムチェンジの高揚感が素晴らしいと思います。
・Masters of the Hemisphere
US産、1996年結成のシューゲイザーバンド。インディーロック路線の甘美な楽曲が素晴らしいです。アコースティックな音源も良いですね。憶測に過ぎないですが、活動時期を考えるとMasters of the HemisphereとLilysがインディーロック路線のシューゲイザーの先駆けなのではないかと思ってます。
・Secret Shine
1993年デビュー、ブリストル発のシューゲイザーバンド。エセリアルで極彩色の甘美な楽音とポップを称える楽曲群が印象深いです。個人的には1stアルバムであり名盤であるUntouchedのリリース元がSarah Recordsだというのも好感度が高いです。
・Swervedriver
UK発、1991年にRaiseでデビューしたシューゲイザーバンド。初期はオルタナティヴロック的な作風でしたが、近年の復活作に収録されているDrone LoverでMy Bloody Valentine的な展開を見せていて元々高かった個人的な評価が更に上がりました。名曲だと思います。
・2000年代以降の新しいシューゲイザー
ハードコアパンクやポストロック、ブラックメタルとのマッシュアップ、インディーロックやインディーポップへの傾倒やドリームポップの誕生などが起こり、個人的にはシューゲイザーの多様性が本質的な意味で開花した時代だと思います。後述するバンドがそれを象徴している様に思います。ただ、現在のシーン全体を俯瞰するのは個人では難しくそれを目的とした記事では無いという事もありますのでここでは○○フォロワー的なコンフォーミズムを感じさせない個人的に気に入っているバンドに限定して列挙していこうと思います。
・Airiel
ほぼノンリヴァーヴの乾いた切れ味の良い轟音とシューゲイザーの王道を行く歌が美しい、シカゴ発シューゲイザーバンド。2001年デビューです。Think Tankの疾走感やSugar Crystalの甘さはシーン全体を見渡しても類を見ないと思いますし、The Battle of Sealandは不動の名盤だと個人的には思います。メランコリーが欠落しているのもポイントかなと。
・Asobi Seksu
言わずと知れたニューヨーク出身で人気の高いシューゲイザーバンドです。ポップに振り切った楽曲とパンクなエネルギーを感じるイノセンス溢れるサウンドが好感度高めです。日本語詞の採用も興味深いですし、ライブ盤で見せたエネルギーも素晴らしいと思います。ここではセルフタイトルの1stアルバムを取り上げておきます。
・Auburn Lull
何処までも耽美なアンビエント・シューゲイザー。ディレイとリヴァーヴの洪水に漂う様なアンビエンス溢れるサウンドとキリスト教信仰と安息を感じさせる楽曲群が素晴らしいです。厳密に言うと1999年デビューですが、主な活動時期が2000年代の為この章で言及しました。下記のAlone I Admireも不動の名盤ですが、編集盤であるRegions Less Parallel: Early Works & Rarities 1996-2004も優れた楽曲ばかりの名盤です。祝祭と安息、アンビエンスとキリスト教的なポエジー。
・Butterfly Explosion
2005年から活動するアイルランド産耽美派シューゲイザー。Lost Trails収録のCloserが屈指の名曲だと思うのですが、作中のビートの展開が変わる所でいつも感動してしまいます。耽美と轟音の海に垣間見える美しく開けた光景。
・Closed Mouth
2019年にCold Transmission Musicからデビューしたという事以外、ネット上に情報が無い謎めいたユニットです。彼らが志向しているのはダークウェーヴとシューゲイザーの折衷ですが、ブラックゲイズやBitter Flowers辺りのバンドと比較するとよりダークウェーヴに寄った黒々しい轟音になっています。ダークウェーヴの先鋭性とシューゲイザーの甘美さの折衷、結果として生まれた黒々しい轟音。
・Con Dolore
1998年にレコーディング・プロジェクトとして始動したシューゲイザーバンド。夢の中を漂う様な危うげで美しいサウンドと楽曲が素晴らしいです。1stアルバムであるThis Sad Movieが名盤で、中でも「She Said Goodbye」と「Dream」が際立っている様に思います。Claire Recordsの初期リリースの中でも一際冴えた印象を受けます。
・Dead Horse One
淡いメランコリーとダークさが心地良いフランス発シューゲイザー。前述した通りメランコリックでダークな音楽性が美しく、Rideのマイク・ガードナーに評価されたのも頷ける様に思います。因みに下記のアルバムのプロデューサーはそのマイク・ガードナーで、彼らはRideのツアーにも帯同しています。メランコリーと淡い闇、卓越したソングライティングと90年代シューゲイザーへの愛情。
・Deerhunter
2001年結成、ジョージア発シューゲイザー / ドリームポップバンド。某所でのインタビュー記事曰く、現実逃避としてのシューゲイザー / ドリームポップに対する否定的な意思があるらしく、その為かどこか特有のリアリズムを感じる様に思います。歌詞でも重いテーマを扱っていますね。初期の捻じれたサイケデリックロック路線も最高ですし、Halcyon Digest以降のドリームポップ路線も素晴らしいです。エクスペリメンタル・ミュージックで有名なKranky Recordsからリリースしているのも興味深いです。有名な話ですがバンド名の由来は映画のDeerhunterだそうです。
・The Depreciation Guild
Pains Being Pure at HeartのKurt Feldman率いる現行エレクトロ・シューゲイザーバンド。美しいスタイルでのシンセサイザーの採用や抒情的な楽曲、インディーロックに振り切ったポップなサウンドが素晴らしいです。Ice Choirを初めて聴いた時にも感じましたが、Kurt Feldmanのポップセンスは常人離れしてますね。最高です。
・Deserta
Saxon Shoreのギタリストが結成した、シューゲイザーとポストロックのマッシュアップを目論む現行のバンドです。特徴的なのは通底するダークで沈鬱な世界観とポストロックの影響が強烈なギター、印象的なシンセサイザーの採用でしょうか。My Bloody Valentine以降のバンドという感があります。沈鬱と暗黒、通底する静寂。
・DIIV
初期はインディー・ポップ寄りのシューゲイザーを展開していましたが、最新作であるDeceiver以降新たな展開を見せ、オルタナティヴロック路線に見事に転身しました。個人的にはどちらも好きですが、転身以降を推す声が僕の周囲では多かったです。
・Downward
2015年結成に結成された現行シューゲイザーの一角です。Nothingと共振する様なハードコアパンクとシューゲイザーの折衷に成功したバンドの一つですね。ただ音楽性はよりダウナーでメランコリーに溢れ、一種のディストピアを描き出している様に思えます。インタビュー記事によると、メンバー全員がRadioheadとDeath Cab For Cutieのファンらしいです。ハードコアパンクのバンドとの対バンが多いとか。ディストピアの表出とハードコアパンクスの精神性、抒情性とメランコリー。
・Exlovers
ロンドン発インディーポップ / シューゲイザーバンド。ギターポップ性とシューゲイザー性が美しく調和していて個人的に愛聴してます。珠玉の名曲である「Starlight,Starlight」の一曲だけでもシューゲイザー史に残る名バンドだと思います。イントロで採用されたリフが楽曲中盤からヴォーカルの対位として機能し始める展開を聴いて感銘を受けました。
・flirting.
2016年にデビューした新鋭シューゲイザー。インディーロックの影響がかなり強いです。シングルトラックのPeppermintを聴くと初期のThe Cannanesを強襲し、その路線を推し進めている様に思えます。純化されたインディーロック性と初期The Cannanesへの愛情。
・Flyying Colours
2013年デビュー、オーストラリア・メルボルン発のネオ・シューゲイザー。ポップでインディー・ロック的な楽曲と王道を行くサウンドが好感度高いです。2010年代以降のスタンダードな趣を感じさせます。
・Forsaken Autumn
中国発現行シューゲイザー。中国ではオーガナイザーとしても著名らしいです。幻想郷に引き籠る様な内省的な作風と美しい歌が印象深いです。眠りの中に沈み込む様なWallowが白眉かと個人的には思います。彼らが抱える幻想郷 / ユートピアは中国のディストピア的社会に対する一種の闘争 / プロテストなのでしょうか。幻想郷への逃走 / 闘争、審美と眠り。
・Gingerlys
アメリカ / ブルックリン発シューゲイザー / インディーロックバンド。清涼感とポップセンスに溢れたドリーミーで完璧な楽曲とエセリアルにも聴こえる旋律、完璧な演奏が魅力的で会う人全員にお薦めしてます。
・A Grave With No Name
2009年にデビューしたベッドルーム・シューゲイザーユニット。ストーナーメタルの様な重く引きずる轟音にサイケデリックで甘美な歌が乗るスタイルが特徴的です。甘いサイケデリアと沈鬱な轟音の美しい対比。
・GRMLN
カリフォルニア発Yoodoo Parkによるソロ・プロジェクト。兎に角多作な作家で、リリースを全て追った訳では無いのですが、僕が聴いた範囲だとIs It Really That Strange?が名盤の様に思えました。求心力を持った歌とベッドルームの夢。
・Guitar
ベースミュージックとマッシュアップされたビート、エレクトロなヴォーカル、デジタルな質感のギターが美しい2002年にデビューした現行シューゲイザー。最新作は2014年リリースで現在も活動を続けています。
・Helen
Grouperがギター / ヴォーカルで在籍する現行シューゲイザーバンド。乾いた質感の美しいサウンドと当然ですがGrouperと共通する歌心が素晴らしいです。バンド名の由来はギリシャ神話のヘレネーでしょうか。
・Hibou
2013年に結成されたシアトル出身シューゲイザー / ドリームポップバンド。インディーポップに傾倒しているのが見て取れる様な淡く繊細で毒の無いサウンドが美しいです。かなりの人気を博しており、2ndアルバムリリース時に各所で言及されていたのが印象深いです。
・Infinity Girl
My Bloody Valentineとインディーロックをマッシュアップしたかの様な轟音が美しい、ブルックリン発現行シューゲイザーバンド。Niche Musicで知って愛聴してます。
・JAGUWAR
MBVを現代のドリームポップ的なシューゲイザー観に沿って再解釈したようなドリーミーかつ色彩感覚に溢れる轟音が素晴らしい現行シューゲイザー。下記の楽曲がエモーショナルかつ耽美、エセリアルで高揚感に溢れていて最高です。
・Japanese Breakfast
Little Big Leagueのミシェル・ザウナーによるソロ・プロジェクト。ヘブンリーでポップ極まるサウンドとドリームポップ色もある美しい楽曲、それとは裏腹にへヴィーなリリックと作品に通底するポエジーが素晴らしいです。
・Jatun
オレゴン発先鋭的エレクトロ・シューゲイザー。M83や最近のPia Frausと比較すると作風がダークかつメランコリックでその辺が好感度高めです。エレクトロニカの影響が顕著でビートの感覚やシンセワークに表れている様に思います。仄暗いメランコリーと耽美的エレクトロニクス。
・Kero Kero Bonito
デジタルな現代アート的な世界観とヴォーカルのアイドル性が特徴的で、Nirvanaの様な静と動の緩急を付けたラウドな楽曲から甘美なドリームポップまで演奏する現行シューゲイザー。ただ彼女達がシューゲイザーのバンドとして活動したのは2ndアルバムのリリース直後から3rdアルバムのリリースまでで、3rd以降はシンセポップ化した様です。因みに1stはヒップホップでした。その振れ幅も個人的には面白いと思います。
・Kindling
マサチューセッツ出身、パンクな疾走感とエモーション溢れる素晴らしい楽曲群が印象深い現行シューゲイザーバンド。エモーショナルな旋律は王道を行くものですが、そこに留まらないインディーロック的なセンスを感じます。
・Kraus
ハードコアパンクのタフな精神性を真摯に受け継いだ激烈な轟音を具える独りシューゲイザー・ユニット。全ての楽器を独りで演奏しています。ハードコアパンク譲りの轟音はそうなのですが、不思議と楽音も楽曲も甘く、内省的なシューゲイザーとして成立しています。ハードコアパンクの精神性から来る強烈な轟音とスウィートネス、開けた光景と優れたポップセンス。
・La Casa Al Mare
宗教的なテイストが色濃いイタリア発シューゲイザーバンド。EPのみのリリースで活動を停止してしまったのが残念です。後述するSea Dwellerとメンバーを共有しています。
・Life On Venus
ロシア / モスクワ発シューゲイザー。彼らは二枚のアルバムをリリースしていて、下記の音源は2ndに当たります。ロシアからの安易な連想ではありますが、彼らの楽音はどこか冷たくその辺の影響かなと推測してしまいます。仄暗い闇とインディーロック的なポップセンス。
・Lunacy
Nicholas Alan Kulpによるソロプロジェクト。文明の崩壊と精神疾患がテーマらしいです。インダストリアルな病んだ質感と終末的な神話の感覚を持っている様に聴こえますが、その終末感は前述した文明の崩壊というテーマから来るのでしょう。個人的にはダークアンビエントのTerence Hannamに感覚が通じる様に思え、グノーシスの終末的な光の様な光明を覚えました。ディストピア性とシュールレアリズム、終末的神話とインダストリアル。
・Mew
闇を一切感じないホーリーで清涼感溢れるサウンドが美しいデンマーク発現行シューゲイザー。ラフで格好良いMew and the Glass Handed Kitesも良いですが、個人的にはより洗練されたFrengers: Not Quite Friends But Not Quite Strangersを愛聴してます。
・Miniatures
オーストラリア / メルボルン出身のシューゲイザーバンド。90年代シューゲイザーを極端な方向に推し進めた様な轟音とポップネスが特徴として挙げられると思います。正直彼らの楽曲の全てが優れているとは思わないのですが、Jessaminesに収録されているHoneyだけは別格で優れたシューゲイズ・ポップだと思います。
・Mumrunner
ごく最近デビューしたエモ・シューゲイザーバンド。エモとシューゲイザーの折衷に成功しており、爽やかで清涼感溢れる轟音を聴かせてくれます。楽曲の完成度も高く、Foeという曲を聴いてExloversのStarlight,Starlightを想起しました。そろそろリリースされるアルバムが楽しみです。
・Niights
2010年代後半を代表すると個人的に思っているシューゲイザーバンド。来日公演には行きそびれました。淡いゴスのセンスとギタリストがスレイヤーのファンである通り、へヴィーメタルの影響と極端にポップな楽曲、オルタナティヴ・ロックの影響が特色でしょうか。スマッシング・パンプキンズのファンらしく、Sylviaという楽曲でそれが伺えます。ゴシックな愛とメタル譲りの轟音、オルタナティヴな構築性とリリカルな女性ヴォーカル。
・No Joy
カナダ発、Jasamine White-GluzとLaura Lloydによるシューゲイザーバンド。Sonic BoomとのSplitが有名ですね。ルードな精神性と捻くれたポップセンス、虚無感と夢想性。
・Nothing
言わずと知れたハードコアパンクとシューゲイザーのマッシュアップのオリジネーター。ポストシューゲイザーを掲げています。宗教色が一番強いDownward Years to Comeの頃から作品のレベルが高く、最新作であるDance on the Blacktopまでぶれる事無く高品質な作品を創り続けています。Downward Years to Comeを聴いた感じだと彼らは有神論者の様ですね。「僕達は神を見つめない、神が僕達を見つめる」という一節を歌っていたので。ハードコアパンクの精神性とシューゲイズの折衷、轟音の中に垣間見える耽美性。
・OddZoo
2018年にBlood Musicからデビューした、個人的に好きなシューゲイザーベスト10に確実に入るバンド。ブラックゲイズともまた違うブラックメタルとシューゲイザーのマッシュアップであり、同時にダークウェーヴやベースミュージックの影響も受けています。マイブラ以上の多声の対位法を楽曲に用いているのですが、それはゴシック性を強調する為の様です。
・The Pains of Being Pure at Heart
言わずと知れたインディーロック系シューゲイザーの代表格。天才的なポップ・センスを見せる楽曲群とシューゲイザーには珍しい具体性のある歌詞が際立っている様に思います。
・Peel Dream Magazine
NY出身現行シューゲイザーバンド。初期はK Records的でどこか脱力した印象的なサウンドを展開していましたが、2020年リリースのAgitprop AlternaではMBV直系のドリーミーな轟音を打ち出していて素晴らしいです。
・Pia Fraus
エストニア発耽美派シューゲイザーバンド。アートスクールで結成されたというエピソードもある通りアート志向が強く、メロディーもコード進行も印象的なアートポップと言う感じで素晴らしいです。天才的なシンセワークも美しいです。M83に代表されるエレクトロ・シューゲイザーの先駆でもあります。来日公演も最高でした。
・Pinkshinyultrablast
徹頭徹尾凄まじい轟音で、尚且つ鮮烈にポップでヴィヴィッドなサウンドが素晴らしいロシア発現行ネオ・シューゲイザー。1stEPであるHappy Songs For Happy Zombiesが前述した作風に当たります。それ以降はドリームポップに転身したのですが、転身以降もタフな音響は変わらないままで好感度が高いです。個人的なこの年代のベストバンドの一組です。バンド名の由来はAstrobriteの曲のタイトルだと思われます。
・The Radio Dept.
ドリームポップとシューゲイザーをマッシュアップするスウェーデン発の人気デュオ。甘美なヴォーカルとサウンド、洒脱な楽曲が素晴らしいです。3rdアルバムであるClinging To a Schemeのリリース辺りで爆発的に話題になっていた記憶があります。ソフィア・コッポラのマリー・アントワネットのサウンドトラックに採用された事で一層人気が増したらしいですね。
・Ringo Deathstarr
2005年から活動を続けるアメリカ発シューゲイザーバンド。バンド名はRingo Star×Death Starという事らしいです。Ramonesの影響で生まれたパンキッシュな疾走感とストレートなポップセンス、名曲を安定して産み出す才覚が素晴らしいです。ライヴは徹頭徹尾轟音で凄まじく内容が良かったです。
・Rotary Ten
シェフィールド発現行シューゲイザーバンド。繊細で感傷的、かつ耽美なギターサウンドと晴れやかなヴォーカルが美しいです。The Smithsの強い影響を受けており、ギターとヴォーカルのフレージング、感傷と耽美性にそれが表れている様に思います。
・Rumskib
デンマーク発の耽美系シューゲイザーバンド。MBV直系の耽美な轟音とダンサンブルなビート、男女混成のアッパーなヴォーカルが最高です。コクトー・ツインズ的な趣も感じます。Morr Musicから作品をリリースしているエレクトロニカのアーティストであるManualが下記の作品のプロデューサーらしく、エレクトロニカの要素は彼が持ち込んだ様です。
・School '94
抒情的で美しい楽曲と透徹したあまりディストーテッドされていないサウンドが印象深い、スウェーデン・ヨーデボリ出身の良質なバンド。Westkustとレーベルメイトですね。個人的にはBoundというEPを推したいです。
・Sea Dweller
La Casa Al Mareとメンバーを共有するイタリア産シューゲイザー。写真右側の人物が中心となっているバンドで、La Casa Al Mareも彼が中心となって結成した様です。職人気質にも映るサウンドの感触と構築度が高くポップで美しい楽曲が素晴らしいので推していきたいです。サブスクリプションには登録していない様です。
・Slow Crush
グランジの影響とシューゲイザーの色彩が美しく調和するベルギー発現行シューゲイザー。1stアルバムであるAuroraが兎に角名盤で、色彩感覚溢れるサウンドとストレートでタフなビート、グランジの影響を隠さないギターとリリカルなヴォーカルが調和していて最高の出来と言う感じです。Nothingがお好きな方にもお薦めできると思います。
・Sobs
現在のシンガポール、大きく見ると東南アジアを代表するであろう現行シューゲイザーバンド。耽美かつポップで多幸感溢れるサウンドとそれと対比する様な失恋を扱ったリリックが印象的なTelltale Signが名曲で愛聴してます。ギターの美しいサウンドにSarah Recordsの影響を感じます。日本の公園で演奏されたアコースティック・セットも素晴らしかったです。
・Somber
ダークで抒情的なサウンドと沈鬱かつポップセンスを忘れない楽曲が素晴らしいオレゴン発現行シューゲイザー。ヴォーカルがSweeping ExitsのMyrrh Crowらしく、その経験が生かされているのかインディーロック色が強いです。ダークなシューゲイザーがお好きな方にお薦めしたいバンドです。
・Submotile
エモとAmusement Parks on Fireの影響が色濃く、強烈でパンクな衝動を抱えたシューゲイザー。透徹なギターワークとヴォーカルが美しく、個人的に愛聴しています。エモの衝動と透明な轟音、漂白されたヴォーカル。2019年の個人的なシューゲイザーベストに挙げました。MVBオマージュのPVも好印象です。
・Sunshower Orphans
ネットにアーティスト写真も情報も上がっていない謎のバンドです。Spotifyの某プレイリストで発掘しました。エモーショナルで感傷的、ノスタルジーを喚起する楽曲と楽音が特色として挙げられると思います。少年時代へのノスタルジーと感傷、乾いたメランコリー。
・Sway
2000年から活動を続けるカリフォルニア産エレクトロ・シューゲイザー。下記のアルバム以前は4人体制のバンドだったらしいですが、この音源からアンドリュー・サクスのソロプロジェクトになっています。某所でも言及されている通りWhat I Knowという楽曲でMy Bloody ValentineのWhat You Wantへオマージュを捧げていて、彼らの影響が強く憧憬を感じます。
・tears
ガレージパンクとシューゲイザーのマッシュアップが最高なオーストラリア発シューゲイザー。エモーショナルで美しい歌が甘く乾いたセンチメンタルな轟音に乗る展開です。個人的にかなり気に入っていて愛聴し続けています。兎に角格好良いです。下記の音源は2ndアルバムに当たります。
・Tearwave
個人的に気に入っている2015年から活動を続けるゴシックかつ極めて耽美なシューゲイザーバンド。1stアルバムはコクトー・ツインズの影響を強く感じさせる内容でしたが、2ndアルバムはゴシック・ロックの影響を前面に打ち出しており名盤となっております。Nothing's WrongとFalling From Graceが白眉でしょうか。恩寵の喪失とゴシックな審美性。
・Title Fight
ハードコアパンクからシューゲイザーへ転身した2003年結成のバンド。2015年リリースのHyperviewが転換期に当たり、このアルバムから内容がシューゲイザーとなっています。過剰なロマンティシズムと甘い憂鬱、ポップネス。
・WHIRR
Nothingのメンバーが在籍する、へヴィーでダウナーなハードコアパンクを経由したシューゲイザーバンド。Nothingと比較するとインディーロックに寄っていて、リリカルで耽美な女性ヴォーカルが採用されている事もありポピュラリティを得ている様です。個人的には2012年リリースのPipe Dreamが好きで愛聴してます。Nothingもそうですが、ポストブラックの代表格であるDeafheavenの元メンバーが在籍しているのが興味深いです。
・Yuck
ロンドン発大人気インディーロック系現行シューゲイザー。Dinosaur Jr.やPavementの影響が色濃いタフで美しいサウンドのシューゲイザーを展開しています。前身がCajun Dance Partyと言うインディーロックのバンドで、そちらも爽やかで最高です。
・Westkust
蒼く瑞々しいスウェーデン産シューゲイザー。ギターがエッジーでドリーミーかつポップで際立っている様に思います。所謂音の壁を作るような音では無いですがそれでも轟音で、新しい音として響きました。
・シューゲイザーとブラックメタルのマッシュアップ、ブラックゲイズ。
Alcestを開祖とするこのジャンルですが、憶測ですがブラックメタルの自浄が大きなテーマとしてあるのかなと思います。ポストシューゲイザーと言うよりは、ポストブラックメタルという発想を持ったアーティストが多いように見受けられます。
・Adorn
2012年結成、イングランド発のポストブラック / ブラックゲイズ。ストリングスの採用や中世趣味のジャケット、どこまでも幻想的で透徹した楽音が印象的です。詳しいバンドの背景はネット上の情報が少ない事もあり今の所知らないのですが、個人的に愛聴しています。
・Alcest
言わずと知れたブラックゲイズの開祖。インタビューでの発言曰く、Niegeの内面に存在するFairylandという幻想郷を表現しているらしいです。冗談めいては居ますが、ヘブンリー・ブラックメタルを演奏したいという発言もありました。そのせいか音楽も幻想的かつ極めて耽美で、安息を感じる様な内容です。通底する幻想性も見逃せないです。
・Souvenirs d'un autre monde
強烈な安息と瞑想性、淡い感情とポエジーが美しい初期の名盤です。アコースティックな要素と轟音が同居しているのも素晴らしいです。幻想的。
・Écailles de lune
Alcestの作品で最もブラックメタルに接近した音源であり、月光滴る耽美な音響が展開される名盤です。個人的には今作がベストです。
・Spiritual Instinct
タイトルが示唆する通りAlcestの作風は全作品を通じてスピリチュアルで、それもブラックメタルの自浄と言うテーマと繋がって来るのだと思います。最新の名盤です。
・Have A Nice Life
2008年デビュー、アメリカ出身のブラックゲイズ / ゴシックバンド。一部のシューゲイザーに流れる宗教的な至福がこのバンドでは死の至福に置き換えられており、そこにゴシックな意思を感じます。Joy DivisionやDead Can Danceの影響も色濃く好感度が高いです。Sea of Worry収録のDestinosに見られる地獄を賛美し神とキリストを否定するマニフェストが強烈に印象に残っています。
・Holy Fawn
ポストロック、シューゲイザー、ブラックメタルを審美的にマッシュアップする現行シーンの要注目アーティスト。透徹した静寂を感じるパートと轟音パートの対比が美しく、ポストロックの高度な楽曲展開とシューゲイザーとブラックメタルの折衷された轟音が調和しているのを感じます。他のブラックゲイズのバンドと比較するとより直截的にブラックメタルの影響を取り入れており、デスヴォイスや楽曲終盤の轟音に表れている様に思います。
・Planning For Burial
アメリカ産現行ドゥームゲイズ / ブラックゲイズ。実質Thom Wasluckのソロユニットの様です。ドゥームゲイズと言う呼称を受けている通り、Have A Nice Lifeと比較するとドゥームでスローなサウンドが印象的で美しく、影響源としてはブラックメタル以外に前述したようにドゥームメタルが挙げられると思います。Chelsea WolfeやDeafheaven、Have A Nice Lifeとの共演歴がある様でその辺りはシーンとして繋がっている様です。
・Sadness
その名の通り悲愴に溢れた耽美な轟音を掻き鳴らすアトモスフェリック・ブラック / ブラック・ゲイズバンド。このバンド以前はデプレッシヴ・ブラックメタルの作品を創っていた様です。
・Sleeping Peonies
デプレッシヴ・ブラック的なデスヴォイスとそれと対比する様な多幸感のある楽曲が特徴的な現行ブラックゲイズ。個人的に折りを見て聴き返しています。
・国産シューゲイザー
この章では気に入っている日本のシューゲイザーを列挙していこうと思います。日本という括りではありますが、民族性に着目している訳では無いのでご了承ください。
・ART-SCHOOL
2000年結成、耽美派シューゲイザーバンド。透徹したサウンドと暗鬱かつ耽美で韻の感覚に優れた歌詞が美しいです。正直に申し上げるとファンになってから日が浅く、大した事を言えないのが心残りです。音楽や文学、ポランスキー等の映画へのFlipper's Guitar文脈のオマージュも印象深いです。
・cattle
Sarah Recordsや初期My Bloody Valentineの影響が色濃い現行の国産シューゲイザー。MBVで言うとSunny Sundae Smileだと思うのですが、ポップにアップデートされているというか、時代を考えると自明かもしれないですがより洗練されている印象を受けます。
・cruyff in the bedroom
1998年に結成されたClaire Recordsにキング・オブ・シューゲイザーと呼ばれる日本の古参シューゲイザーバンド。壮大で耽美な楽曲展開とサウンドが魅力的です。
・For Tracy Hyde
ガリレオガリレイに代表されるJ-Popとシューゲイザーのマッシュアップ。ポスト渋谷系を掲げているらしいです。耽美で淡い楽音に内省的でリリカルな美しい日本語詞が乗る展開はどこまでも美しく、特に2ndアルバムを愛聴しています。
・Luby Sparks
2016年結成、東京で活動する現行シューゲイザー / ゴシックバンド。初期のインディーロック路線の音源も愛聴してますし、転身後のゴシックなシングルも好きで折を見て聴き返してます。彼らのゴシックへの転身は今後のゴスリヴァイバルの普及を象徴している様に思えました。
・Plastic Girl In Closet
イノセンスとポップセンス溢れる楽曲およびサウンドと時折垣間見せる残酷が印象的なリリックが美しい現行国産シューゲイザー。最新作であるeye cue rew seeが名盤だと思います。
・plums
札幌小樽発現行和製シューゲイザー。美しい轟音とJ-pop的歌唱が同居していて素晴らしいです。このバンドも羊文学との共時性を感じます。最近良く聞いてます。
・クレナズム
J-Pop的な歌唱とシューゲイザー度が増した羊文学の様なサウンド、ドラマチックな展開が印象的な現行のシューゲイザーバンドです。羊文学との共時性を感じます。その辺りはあまり詳しく無いのですが、きのこ帝国の影響が強いらしいです。
・みにくいうさぎの子
ヴォーカロイドである彩音ゆめをヴォーカルに据えて耽美なシューゲイザーを展開するソロ・ユニット。ドリーミーかつ轟音なギターの音響が美しいし、ヴォーカロイドとシューゲイザーの相性は良いのだと気付かされました。
・死んだ僕の彼女
現行国産シューゲイザーの代表格だと個人的に認識しているバンドです。へヴィーミュージックの影響が顕著な透徹した轟音とそれと同居する儚さ、九想図に描かれる死者の変化を彷彿とさせるリリック、テーマ上での死への接近が象徴的に見えます。名作EPであるIxtabの時期に見られた自覚的なものか無自覚なものかは分からないアゴニーの表現も強烈でした。
・揺らぎ
ユートピアンの精神性と静寂と轟音の対比、業を一切感じさせない透徹した楽音とエセリアルな歌声が印象深いです。Gregor SamsaのCompanyへのオマージュも巧みだと思います。
・溶けない名前
現行国産歌謡シューゲイザー。歌謡シューゲイザーを掲げる通り、昭和歌謡やアイドルポップの影響を受けていて親しみ易く、同時に耽美で素晴らしいです。インタビューで言及がある通り短歌の影響がある様に思え、日本的な湿り気はそこから来る所もあるのかなと思いました。
・17歳とベルリンの壁
東京出身現行和製シューゲイザー。ポップで抒情的な楽曲と低体温なヴォーカルが印象深いです。ギタリストがハードコアパンクとエモから影響を受けていると公言していて、その文脈の鮮烈なエモーションやエナジーを感じます。
・・・・・・・・・・(東京ドッツ)
正直アイドルには疎く、このグループがアイドル史上のどの文脈に属するのか判断しかねるのですが、シューゲイザーを前面に押し出しているので言及しておきたいと思います。アイドルらしい甘い楽曲とリリック、トランシーな展開が持ち味でしょうか。きみにおちるよるのドラムンベースとシューゲイザーのマッシュアップ的展開が鮮烈でした。
・最後に。
ここまで素人の駄文を読んで下さって有難うございます。本記事も現行の作家のレコメンドが主な目的なので、一組でも琴線に触れる作家が居れば幸いです。