クァジーモド/クァジーモド全詩集(岩波文庫)

前提として、私はクァジーモドの詩が好きで愛していて、大きく影響を受け、救われています。
傷、付いてしまった傷、傷と生、という意味で、生と美、戦争体験の傷と言語的変性の、生と闘争の詩篇である。
例えば終末的な美的感覚と私語に変性させる生の営為としての短歌、という意味での塚本邦雄に救われて私的に大きく影響を受けている事や、パウル・ツェランの私語/詩語、失語と記述の相克的闘争と、そこから美しさと尊厳に向かい、生を肯定し、生きてゆく為の営為としての闘争と美の詩篇、という詩歌の水脈があり、私は救われる。
こととして、その忘却を防ぐ河として、
クァジーモドもその水に連なる堕ちることの痛みを包む柔らかな布の言語、痛みの緩和と変性の詩であるだろう。
同時に技法的側面として、フランス派記号論以降のシニフィエとシニフィアンの自明とされる対応性の神話の崩壊、以降の現代詩の言語、射程があるが、クァジーモドの言語、詩語/私語の特異性は、構文、例えば接続詞やモチーフ間の距離、文法的ギャップ/スライドをあまり多様しないにも関わらず、明らかに詩と真理の射程として抽象性が担保されている事である。では、それは何処から来るのか。恐らく遠くを見つめている、美と思想として、傷の変性と処理として。非在の場を見つめることは美しく、同時にそれは詩における場所、空間に反映される。
クァジーモドに大きく影響を与えているであろうウンガレッティの詩は、地上の闘争の撃たない銃(声)の言語である。
クァジーモドの言語は、天上から地上を見る、眼と音楽の耳、ふれる手と指先の言葉であり、
この詩篇群で刻まれる場所の殆どは存在しない、非在である、具体的な場所を書いていても、どこか現実ではないとこにあるように響く。
ではなにが実在性から、言明されずに否定されるリアル/リアリズム、地上から離れているのか。
恐らくは行間のギャップ、連続性、モチーフ、その点の叙情、叙情の音楽的進行、その進行的なグラデーション、の話であり、花のモチーフのスライドされた、私語としての多層的なシニフィエと、それら花々の反語的な、比喩的な、何かに添えられるものとしての意味であり、まだゆっくり考えている。好きな詩集だから。
同時に、前述の音楽的進行、詩のリズムと叙情、(非小説的な意味での)ナラティヴの音楽的進行は、身体から離れていて、読者を身体から離れさせる。
それは読者を救うだろうし、私が好きな連続でもあって。同時に、クァジーモド自身の地上と惨禍への忌避や、詩人の傷の処理でもあるのだろう。多くの傷は身体を伴うか、身体に反映される。それら身体から離れる事も、この詩と私語の天体から地上を見るような言語、地上から離れるような、詩の非在の空間や、痛みを薄める安らぎや、彼自身の傷の緩和や変性として、美しいものとして刻まれている。
天上に身体はない。だから地上ではないところとして、痛みの緩和や救済や、安らかなものの隠喩とイデアのように綴られる、自明な文脈と詩歌の水脈、私語の天上、詩歌の天上がある。
それは必ずしもキリスト教、その他宗教のものではない。塚本邦雄が逆信仰、と呼ばれるロジックでも証明していて、その他の言説、比較神話やサタニズムの文献でも引ける刻印がある。
そもそもサタンは天国から堕ちてきたものである、から、
空も天上も全体的に神々のものではなく、世界は既にニーチェであり、私たちの安らぎと、安心と幸福の庭として天があってもいいだろうし、多くの詩歌の天、天体は、そのような非宗教的な、わたしたち人間ではないかもしれない第二の母語を記述して、解するひとや人間の領野である。
少なくとも、詩歌ではそのような天、そのような庭を描くことが出来る。
クァジーモドはそこから地上を、人間や傷を見ていて、それらは詩/私語のなかで、として、痛みや墜ちることを緩和するように、美しいレトリックや花々で包まれる。
この詩篇の中の死は反語的な生の肯定で、何故クァジーモドが生を強く肯定する事を前景化させたのか、というと、やはり戦争、戦争体験で、その意味で本質的な反戦詩であり、非在の場所を描こうが、社会を描いてリアルであるように見えても、このような不動性、悲劇の不動性に抗う言語/私語/詩語が、現代詩の中核であるだろう。それはパウル・ツェランの美と闘争の私語が現在の現代詩に大きく影響を与えていることもそうで、塚本邦雄が戦後前衛短歌をある意味で構築した結晶である事と近しく、アウシュビッツのような言表が難しい悲劇に国境はない。
それらの傷なのか傷跡なのか、もう分からないようなものについて思考する、私語/詩語を、ためらいながら静けさとして、ためらい傷に似たものとして書くことに現代詩の中核性のひとかけらがあり、だから現代詩をずっと好きなものとして、読んだり記述して、綴ったりしています。僕は一応詩人で歌人なので。
今後もこの詩集はずっと読むでしょうし、原書で読みたいので、イタリア語を勉強しようかなぁとか。
最近は回復しながらゆっくり休みつつ生きていて、文芸批評(のようなもの)もたまに書いていきます。制作にも反映される、言葉の感受と読む深度、深く、ふかく潜って読んで触れること、そこにハイデガー美学で綴られるような真理の伏蔵性、伏蔵された真理があり、少なくとも、その詩人や歌人にとっての、そこから生まれるのが詩語/私語なのでしょうし、そういうものに触れることが、大きな救いになっていて。だから音楽や文学が好きで。
そこに触れて読むことは、好きな詩人や歌人への敬意と愛情であり、僕自身の文学に限らない、音楽や映画、その他の芸術への倫理でもあります。
その意味で批評と制作は、音楽や文学、他の芸術の分野で強く紐付いているのでしょうし、その意味で批評と実作を並行してやっているのは僕の意思として、縊死しない為の安らかなことで。
なので、今後も色々実作、詩や短歌、音楽や他の諸々や、批評を公開していこうと思います。
酸欠天使文學ちゃん『心療外科』(SIREN : 0015)──ポスト(ヒューマン)のロマン主義など
・はじめに
先日、わたしが共同主宰として運営しているレーベル、Siren for Charlotteから酸欠天使文學ちゃんというポスト・シューゲイズ・プロジェクトの1stアルバムである『心療外科』をリリースしました。
大変美しい作品で、ポスト・シューゲイズとして、勃興する、ポスト・インターネット以降の、美しいジャンクヤードのデジタリズム(の音楽)として、鮮やかなノイズの実験として、残酷な青春譚の導入、文学と音楽、ポスト・シューゲイズの実験として、極めて意義深い作品だよねと。
で、ざっくり色んな事を考えているので纏めます。
今後もセイレーンのリリース作品について、リリースの度に私見としての批評を纏めます。可能な範囲で時間を見て旧作についても書きます。
・この音楽について
酸欠天使文學ちゃんさんの音楽は超美しいですね。
アノマリーな音楽、異形のシューゲイズは時代性、その共時的な事象の一部で素晴らしいものですが、ポスト・シューゲイズと文学性、澁澤龍彦的でありつつ、日本古典文学の異端的形象と言えるそれとシューゲイズ以降とノイズという観点で達成されている。
この音楽には作者が私性として存在するが、音楽の中に作者が中心として存在せず、物語主体が中心で、ダンダンヲさんは観測者であるようにも聴こえる。遠泳音楽の物語性と私との隣接であり、同時に新しい現代のロマン主義、ポスト・ヒューマンのロマン主義、非人間中心性のロマン主義にも聴こえる。
非人間中心性のロマン主義、新しい時代性の一角、例えばArcaであり、Deconstructed Clubであり、壊れた世界以降のエコロジー(概念、思想)であり、〇〇を立ち上がらせる為の手段でもある。例えば、存在しない天使(性)は現代においては明らかにヴェッセル、主体や願望、傷を賭す為の器であるがそれ自体器でしかないものに物語、そこに中心的な主体ではない形で、物語に構造的に表現、投影、構築、射像される私を賭した上で、そのものがたりを通時的な時間をハックする時間芸術としての音楽として成立させるならそこに内在する、総体として立ち上がる天使的なものを浮上させること、それが可能である事、成立させる事の成立の音楽的語彙であるは非人間中心性のロマン主義の音楽の戦略性、その浮上の、戦略的なものの成立可能性なのかもしれない。
旧来的なロマン主義が時代の都市環境と自然の関係、そして私の混成から立ち上がる私の眼から生起する世界、眼から立ち上がる世界がセカイであるのだからそこには反語的な私を中心として(混在としての、隣接としての、包括する私としての)立ち上がるわたしが生成点である世界がある、とするならこの物語、音楽における私、わたしの眼はどこにあるのか。それは物語の作中主体、殺す少年と殺される少女であるのか。いや、恐らく違うのだろう。それでは音楽がナラティヴの、通時的時間の、地上の水平な時間に留まるだろう。この音楽はそうではない。
この音楽、物語における主体、私、わたしの眼は恐らく物語の総体から立ち上がる、天使的なもの、器でしかないもの、そこに射影された何者かであるのではないか。それはダンダンヲさんなのか、ある意味で天使的に仮構された、実態を持つイーサリアルなエートルである酸欠天使文學ちゃんなのか。
時間の流れが地上ではない。現実の通時的時間をハックしながら進行する時間芸術ではあるが、地上の時間の通俗性を否定しながら狂おしくジャンクヤードを進行する音楽。
インターネット/デジタリズムを触媒とし、不在のエーテルを追うように、現実の地動説を否定し、空想の天動説の宇宙(観)を浮遊し、思考し、加速するデジタルの美意識がジャンクヤードの仮構的な肉体を創造し、存在しない大地、仮構されたフィクションの大地を走行可能にする、その音楽性、私性の。
ある意味で現代の環境、DAW、デジタル機材、MAX/MSP、アートコーディングは新しい、仮構の、不在でありつつ振動する、新しい肉体性を獲得する手段として成立している。
例えばBurialのオーガニックで手作業的な印象を与える、グリッドからスライドさせられたビート構造はビートのグリッドにおける非身体性、規律性、画一性、私の(類型性、画一性、パターン性による)希薄さを脱却する為の脱構築的な方法であるだろう。
同時にそれはD'Angelo - Voodooに代表される身体的で、レコーディングによる感覚、感性の創造の為のリズムのスライドの実験から来ており、同時にIDM、Telefon tel avivやAutechreが数学を扱ったアートコーディングで開いた手法であって。それもまた私を立ち上がらせる方法だと(素朴に)言える。
同時にこの音楽にも身体がある。だがそれは現実の肉ではない。人間の肉は否定され、だがデジタリズムの仮構された振動する身体がある。それはこの音楽においては天使的に構築されたものである。そして、人間が中心にいない物語、その頂点の何者かの眼から世界/音楽が立ち上がる。

ベストディスク2021 50~1
今年も良い音楽に恵まれた素晴らしい一年でした。筆者の体力不足で画像とコメントは二十位からになります。ご了承下さい。
50.Alice Gift / Alles ist Gift
49.Saint-Léon / Signs of Saint Léon 2016-2019
48.Sturle Dagsland / Sturle Dagsland
47.Kaelan Mikla / Undir Koldum Nordurljosum
46.Blacklight Chameleon / Tearing at The Edges of All Restraint
blacklightchameleon.bandcamp.com
45.Gloomchurch / Solar
44.(Sic)boy / Vanitus
43.Fire-Toolz / Eternal Home
42.Lunation Fall / Near
41.Asian Glow / Cull Ficle
dbeatdropdeadpowerhead.bandcamp.com
40.Rebecca Peake / July
39.サトミマガエ / Hanazono
38.Ludalloy / Sine
37.THE SPELLBOUND / A Dancer On The Painted Desert
36.Meishi Smile / Ressentiment
35.Japanese Breakfast / Jubilee
34.Cold Cave / Fate In Seven Lessons
33.Julie / Pushing Daisies
32.Paragon Cause / Autopilot
31.Optroquat / From The Shallow
30.Helm / Axis
29.Black Swan(Drone for Bleeding Hearts) / Repetition Hymns
28.Haruka / Wriggle Doll
27.月ノ美兎 / 月の兎はヴァーチュアルの夢を見る
26.QUAL / Tenebris In Lux
25.Youth Code & King Yosef / A Skeleton Key in the Doors of Depression
24.Ms.Machine / Ms.Machine
23.PLASTICZOOMS / Wave Elevation
22.Portrayal of Guilt / We Are Already Alone
21.Sicayda /Sicayda
20.Cathedral Bells / Ether

フロリダを拠点に活動するシューゲイザー・バンドによる2ndアルバム。
1stアルバムは多幸感の強いシューゲイザーの佳作という印象だったが今作で化けたというか、強烈な幻想性を抱えた完成度の高い音楽が提示され、結果的に現行シューゲイザーの最前衛の一角に躍り出た印象を受ける。
何処から聴いても欠点の無いアルバムというのはあまり存在しないが、今作の駄目な点を探す事は難しく、微かにポスト・パンクの要素を漂わせている所も個人的に好きな点だ。
cathedralbellsmusic.bandcamp.com19.Teenage Wrist / Earth is a Black Hole

アメリカ・カリフォルニア州を拠点に活動するオルタナティヴ・ロック・バンドによる2ndアルバム。
シューゲイザー、オルタナ、ハードコア・パンク、エモを消化した上で自分達の音楽として表現する彼らの作品が期待に背く訳は無く、今作も紛うこと無き名作だった。
陰鬱と晴れ晴れとした叙情を両義として表現する様な作風は健在で、モダンなオルタナティヴ・ロックとしてもシューゲイザーが要素として取り込まれた音楽としても珠玉の出来。文句無しの名盤と言える。
18.Grouper / Shade

GrouperことLiz Harrisによる十五年間の音楽の記録。
『Dragging Deer~』で見せた超然とした、つまり宗教的なアトモスフィアの強い音楽や『Ruins』以降の自身の痛みという磁場を中心に聴者を巻き込み傷口を縫う様に響く音楽とはまた趣の異なる、ベッドルームでその演奏を聴いているかの様な親密さに満ちた録音は、リリース以降都市空間の雑踏や荒涼とした郊外、長閑な河沿いや片田舎の牧歌的な情景を行く際の個人的なサウンド・トラックとなった。
間違っても高音質とは言い難い、凡百の作家であれば作品の品質を損ねる様な録音環境でもGrouperの音楽は何ら損なわれる所が無い。それは音楽の核が強靭である事を意味しているのだろうし、主軸に据えられているアコースティック・ギターと歌の演奏がそもそも何の装飾も無く成立する審美性を抱えている事の証明でもあるだろう。
17.Lunarette / Clair de Lunarette

アメリカ・ニューヨークを拠点に活動するドリーム・ポップ・バンドによる1stEP。メンバーの殆どが珠玉のシューゲイザー・バンド、Gingerlysの元メンバーでもある。
多幸感と幻想、と言ってしまうと簡単に過ぎる。近年のドリーム・ポップの潮流やMr Twin Sister的なある種のスペーシーな質感を持った完成度が高い作品で、歌の旋律の洒脱さやサウンドの完璧な構築性、楽曲展開が持つ美しいドラマ等この種の音楽として完璧で、ドリーム・ポップ史に記述するべきバンドなのは間違いないだろう。
今年のドリーム・ポップだと間違いなく個人的なベスト。より広く聴かれて欲しい。
lunarette.bandcamp.com16.FRITZ / Pastel

オーストラリア・ニューキャッスルを拠点に活動するシューゲイザー・バンドによる1stアルバム。
Black Tambourineが開き、Westkustがモダンに瑞々しく継承したノイズ・ポップとしてのシューゲイザーの最新形。全編通してノイズと共に疾走するサウンドはその周辺の音楽として完璧で、特に「Pastel」が筆者の趣味に嵌った。
サウンドの傾向として、例えばガレージ・ロックとシューゲイザーを折衷するTearsの様なバンドと併置して語れる感覚があるが、これはオーストラリアのシーンのムードなのだろうか。筆者にとってとても好ましいものである。
15.Sonhos tomam conta / wired

ブラジル・サンパウロを拠点に活動する宅録ブラックゲイズ・プロジェクトによる1stアルバム。
二進数のエーテルの中をメンタルヘルスの痛みや身体性から乖離した浮遊感を伴って疾走する様なポスト・インターネットの世界に顕れるべくして顕れた、または世界に終生馴染めない筆者の様な人種の為のサウンド・トラックとして完璧に美しいブラックゲイズ。Sleep like a pillowでもディスクレビューを書いたが、この作家についてはコラム等長めの論考を書いて整理したい。また、叶う事があればライブを観てみたい。
14.Butohes / Lost In Watercycle

日本・東京を拠点に活動するロック・バンドによる1stEP。
リファレンスが多様であるがそれを直截的に感じさせない、自発性や自分達の創造に拘る姿勢はDownyの創作への態度の継承と見て間違いないのだろうか。そこから生まれる音楽に魅了された聴者は僕だけでは無いらしく、SNS上で話題を集める姿が観測された。
澄み切った音像を聴くとポスト・ロック、例えば「W/N/W/D」のギターとヴォーカルの展開を聴くとある種のドリーム・ポップ、と言いたくなるが明らかに特定のジャンルに収まる音楽では無く、新しい音楽としか僕には言い表せない。
今後の作品が本当に楽しみで、機会があればライブで彼らの演奏を聴いてみたい。
13.Beauty of Sirin / Крылья духа растут в тишине

ロシア・サンクトペテルブルグを拠点に活動するブラックゲイズ・バンドによる2ndアルバム。
密教的かつダークな、AlcestやDeafheaven等の源流から見ると異形の進化を遂げた高水準なブラックゲイズ。ある種の宗教性と言うのか、旋律やサウンドに何処か崇高さが感じられ個人的に好ましいバンド。
厭世とオカルティックな探求以降の成立としてある審美的サウンドはこの周辺のリスナーは是非聴くべきだと思うし、後述するがサンクトペテルブルグシーンの層の厚さを思い知らされる。
12.MOXPA / Огнём природа обновляется всецело

ロシア・サンクトペテルブルグを拠点に活動するブラックゲイズ・バンドによる1stアルバム。
今年のブラックゲイズ周辺のリリースでも特に気に入っているアルバムと前置きしておきたい。影響源を辿ると、当然ではあるがシューゲイザーとブラックメタルがあり、それに加えて彼らの特色としてポスト・パンク、特にデスロックと呼ばれる一派の影響を聴き取れる。例えばChristian Deathがそうだ。
思想的な側面を分析するとオカルティズムの色合いが濃いのだろう。内省的な音楽性で、グノーシス期のPopol Vuhやリチュアル・インダストリアルのAin Soph、リチュアル・ダークアンビエントの一派辺りが隣接する作家だろうか。
とは言っても邪悪で呪詛の籠った作風というより、ある種の清々しさを感じる強い思弁性を抱えた音楽である。追記すると、ロシア・サンクトペテルブルグには規模の大きいブラックゲイズの人脈、言い換えるならシーンが存在するらしく、その周辺から台頭するバンドは全て珠玉である。ブラックゲイズの全てのリスナーに聴いて欲しいアルバム。
11.Misertus / Punctual

イギリス・マンチェスターを拠点に活動するブラックゲイズ・バンドによる5thアルバム。
何だかんだで初期から彼らの活動を追い続けていて、前作『Earth Light』で見せた光輝く叙景、開けた幻視の光景に驚かされたがどうやらまだ早かったらしく今作でまた衝撃を受ける事になった。
Deafheaven以降の正当進化と言うべき激情ハードコアの要素が強い轟音は闇に沈み込みがちなジャンル周辺のバンドの方向とは趣を異にしており、強い光の様な審美性を強く表している。
ブラストビートがここまで清々しく響くバンドも稀だろう。今後の活動が楽しみで、願わくば来日公演に期待したい。
10.溶けない名前 / タイムマシンが壊れる前に

日本を拠点に活動するシューゲイザー・バンドによる3rdアルバム。1stアルバムの再録盤でもある。
『制服甘露倶楽部』がとにかく好きで、何度も何度もそれこそitunesの再生回数が三桁後半を超える程聴き返したバンドのアルバムが1stアルバムの再録という事で驚き、作品を聴いて更に驚いた。元々1stの楽曲の良さは認識していたが、2nd以降のソリッドな轟音によって演奏される事で2ndと遜色無い強度が表現されていたからだ。
今後の作品も本当に楽しみで、個人的に得難いバンドのこの作品を大切に聴いていきたい。
9.The Florist / IN CVLT

東京を拠点に活動するシューゲイザー・バンドによる3rdアルバム。
耽美で幻想的なシューゲイザーサウンドを志向するバンドは今作でヘヴィー・シューゲイザーと隣接する作風に舵を切っており、それは個人的に好ましい変化だった。
審美的な旋律とサウンドは以前と変わらず、重厚さを増したサウンドが個人的な趣向に嵌り何度も聴き返していた、というか今後も聴き続けるだろう。
一度で良いからライブを見てみたい、というか大阪に来て下さい。
8.CURSETHEKNIFE / Thank You For Being Here

アメリカ・シカゴを拠点に活動するヘヴィー・シューゲイザー・バンドによる1stアルバム。
明らかにNirvanaへのシューゲイザー流の愛の表明である「Feeling Real」から始まる今作は今年のヘヴィーシューゲイザーの中でも目立つ出来だった。Nothingの影響下にある事も明らかだろう。「Too Solid Too Flesh」でのダウナーな安息は彼らから継承した感覚として見て間違いない。
個人的に注目したいのは、「In Dreams」でMy Bloody Valentine「Soon」へのヘヴィー・シューゲイザー流のオマージュを試みている事だ。「Soon」のビートをハウス由来のものとして解釈した上でアップビートに展開するこの楽曲が個人的なアルバムのピークで、サビの開放感と美しさに強く感嘆したのは記憶に新しい。
7.For Tracy Hyde / Ethernity

東京を拠点に活動するシューゲイザー・バンドによる4thアルバム。
アルバムの制作の度に進化と挑戦を続けるバンドの今作は、グランジやスロウコアを参照したヘヴィー・シューゲイザーとして成立している。
前作からポップなソングライティングを引き継いだ、もしくは進化の過程にあると見るべき「Just Like A Firefly」、リリックが透徹しており美しい「Interdependence Day Part 1」、Nirvana「Heart Shaped Box」のシューゲイザーによる巧みな変奏「Chewing Gum USA」、個人的にアルバムのピークと捉えている「へブンリィ」など珠玉の楽曲が並ぶ。
聴いていてここまでストレスや居心地の悪さを感じない、心地良いアルバムが他に何枚あるのだろうか?今後も繰り返し聴いていきたい。
6.Submotile / Sonic Day Codas

ダブリンを拠点に活動するエモ・シューゲイザーバンドによる2ndアルバム。
ドラマティックな楽曲展開やエモを経由した清々しい轟音は健在で、前作から美しく進化した印象を受ける。ドライブ感と言うのか、音楽を前に駆動させる力が途轍もなく強く、聴取時の体感する時間がとても短かった。
今作以降も安定して名盤をリリースする(と勝手ながら期待している)このバンドの活動を今後も追い続けたい。願わくば来日を。
5.Deafheaven / Infinite Granite

サンフランシスコを拠点に活動するブラックゲイズ・バンドによる5thアルバム。
シューゲイザーとブラックメタル、そして激情ハードコアとの折衷、つまり黒々しい幻想に満ちた轟音を全面に押し出していた彼らが音楽性を変貌させた衝撃は僕にとってもそれなりに大きく、またそれは好ましいもので今年一年を通して何度もこの作品を聴き返す事になった。既存の方向性が近い作家を挙げるならドイツのTrautonistだろうか。この作品がお好きな方は是非ご一聴頂きたい。
デスヴォイスと轟音に支えられていた叙情が旋律と和声に置き換わった事で彼らの音楽が損なわれる筈は無く、凡百のシューゲイザー/ドリーム・ポップの作家では達成出来ない地平をまた展望する事になった。今作以降、彼らがまた轟音に回帰するのかクリーンな方向性を極めるのかという点は個人的な関心でもある。
deafheavens.bandcamp.com4.Stomp Talk Modstone / Linger in Someone's Memory With a Lurid Glow

国産シューゲイザー・バンドによる待望の1stアルバム。
先ず全編を通して聴いて気付くのは、意識的なものか無意識的なものか判断しかねるが、バンドが90年代のオリジナルシューゲイザーからニューゲイザーを経て現在のシューゲイザーに至るまでの歴史を俯瞰しており、その再解釈と吸収が行われた結果の作品である事だ。My Bloody Valentine、Slowdive、Chapterhouse等は言うまでもなく、例えば「Wander」には近年のDIIVとの隣接を感じるし、重複するが「You Should Know」はMBV「To Here Know When」への美しいオマージュである。
再解釈と表現という音楽上の営為は対象への批評を内包する事になる。彼らの音楽は、シューゲイザーの三十年の歴史への総体的な批評であり、その美しい結晶なのだ。
3.Kraus / View No Country

待望の、という言葉では言い足りない程待ち望んでいたソロ・シューゲイザー・プロジェクト、Krausによる3rdアルバム。
1st、2ndと徹底的な轟音とシューゲイザー特有の対岸を臨む様な幻想性を打ち出した音楽を展開してきた作家だが、今作の洗練の極みの様なサウンドで新たな地平に達したというか、個人的なシューゲイザー体験を塗り替えたと言っても言い過ぎでは無い完成度の作品が提出された事が喜ばしい。
「From You」がアルバムのエモーションの極点を記録している、と思う。全編通して美しい珠玉のシューゲイザー。
2.파란노을 (Parannoul) / To See the Next Part of the Dream

韓国を拠点とするソロ・シューゲイザー・プロジェクトによる2ndアルバム。
偶々BandcampにてShoegaze+Koreaで検索を掛けた所、リリースから三日後のこのアルバムがヒットした事が今思うと幸運で、2021年の中での大きな事件となった。
音楽的には恐らく思春期に通過したであろうSDREやマスロック、言うまでもなくシューゲイザー、その他のエモやハードコア・パンク等の影響が伺えるが、彼の音楽を他との比較を拒絶する優れた水準にしているのはその叙情だろう。
決して光が常に差し込んでいる訳ではない青春の、その断片が美しく燃え、濾過され、透過し、結晶化した叙情が全編に渡って力強く展開される音楽が広く支持を集める事は必然だと思う。例えば前衛短歌のある提言の様に、新しい芸術には新しい叙情が必須のもので、新しい叙情を獲得している事がその芸術の新鮮さをある部分で保証するからだ。
彼が僕のインタビューを受けてくれたのは僥倖だった。今後もこの名盤を聴き続けたい。
1.Sadness / April Sunset

アメリカを拠点として活動するソロ・ブラックゲイズ・プロジェクト。
多作かつ飛び抜けた水準のブラックゲイズを創る作家による、今年のジャンル周辺でも明らかに異色の出来の作品。エレクトロニカ的なイントロから轟音へ移行し、クリシェから逸脱した、譜割りが困難だと思われる不定形の音楽が展開する「Bigbury April Twilight」から美しく叙情する「Collar」まで全編を貫く異次元のアンビエンスとグロテスクな要素を一切欠いたデスヴォイスに打たれる。
今年はブラックゲイズもシューゲイザーも豊作で、素晴らしい作品が散見されたがこの一枚の完成度は明らかに白眉の出来だった。
核、審美、思想──音楽の収集とそれ以降のリバイバル
0.初めに
この一連の文章では、様々な議論を生みがちな音楽ジャンルという概念を先ず個人的に定義し、それを前提に聴者と作家の相互関係によって起きるリバイバルという現象について記述し、その上でシューゲイザー、つまり単なる形式に留まらず、それ以降の深層に普遍する、若しくは偏在する審美眼と思想を抱えた音楽の拡散について記述していきたい。短い文章なのでお付き合い頂ければ幸いです。
1.文化圏=カルチャーの定義と名付け
初めに、一例としてシューゲイザーというジャンルの成り立ちについて検討する。
シューゲイザーの音楽的な勃興の起点となったのは間違いなく、1981年のCocteau Twinsの結成、そして翌年の『Garlands』のリリースと言えるだろう。現在ドリーム・ポップとして解釈されるその音楽は最初期から現在のシューゲイザーに渡る普遍としての幻想性やイーサリアルと呼ばれる天蓋を志向する様な透徹した感性を既に備えている。そしてこのアルバムにはゴシック・ロックの部分的な影響が聴き取れ、初期My Bloody Valentine(以下MBV)やLush、現行のポスト・パンク・シューゲイザーとリンクする作風だがこれは余談である。
それ以降として、1985年にMy Bloody ValentineとCranesの結成、1986年にA.R.Kaneの結成、1987年にChapter House、Pale Saints、Lushが結成され、MBV『Suny Sunday Smile』『Ecstacy』がリリースされ、1988年に現在のシューゲイザーの原型であるMBV『You Made Me Realize』『Isn’t Anything』がリリースされ、1980年代のこのジャンルの基盤が築かれる。
そして運命の年である1991年、MBV『Loveless』、Slowdive『Holding Our Breath』、Chapterhouse『Whirlpool』、Curve『Doppelgänger』、Black Tambourine『By Tomorrow』のリリースを迎え、それに伴った聴衆と共に一つの文化圏=カルチャーの始まりを迎える。
重要なのは、各々のバンドが固有の音楽性を持っており、個に強く立脚しているという点だ。その音楽の状況やシーンに対して個として直面しているという事が肝心なのだ。そのミュージシャン達が作る音楽が形成する、単なるタグや枠組みとそれ以降の集合では無い、ミュージシャン=音楽と聴衆の相互作用が作り上げる文化圏=カルチャーこそが一つの音楽ジャンルである、とここで個人的に定義したい。
シューゲイザーという語が歴史上初めて用いられたのは音楽雑誌『サウンズ』に掲載されたMooseのライブへのレビューであり、それ以降皮肉な意味合いを持ってその語が用いられ、ジャンルの名称として定着した、というのはWikipediaにも記載がある有名な話だ。そのエピソードが示している事は、始まりの名付けとその後のミーム的普及、それが特定のカルチャーと結実する事による名の受胎、そしてその後の音楽(とそれに伴う所作)へのイメージへの影響だろう。始まりは蔑称に近い命名と皮肉を内包した普及だが、それが普及するに従って例えばライブ・パフォーマンスに特定のバンドの模倣としての所作と同時に始まりのイメージとして影響する事が名という概念の意味だろう。それは元々蔑称だったから、という安易な検討で片付けられるものではなく、聴衆と作家が相互に形成してきたイメージとスタイルのであり、逆説的に音楽の一つの表象となる。つまり、ジャンルという概念は音楽を縛る鎖でも単線上の進化論に基づいた名でもなく、文化圏=カルチャーの表象であり、イメージであり、ある種の体現の為の名なのだ。間違っても、そのジャンルを掲げてコンフォーミズム以降の音楽を展開する事についての言及ではないが。
2.音楽、そして文化圏の核と特定ジャンルのリバイバル
第一章で言及した通り、シューゲイザーというジャンルはそもそも1991年の各々の個に立脚した音楽が母体となった一つの文化圏=カルチャーである。しかし、単なる同好の集合であればシーンや文化圏、カルチャーは成立しない。では何が彼らを結びつけていたのか。
ここで言及したいのは始原となったバンドやルーツについてでは無く、音楽が内包するある種の普遍、もしくは偏在である。
シューゲイザーの共通項として論拠を省いて語るとするなら、挙げられるのは遠さ、つまり対岸を見つめる心性、聴者を誘う幻想性の二つが先ず挙げられるだろう。当然形式は音楽の核心の一つだが、スタイルの変貌がその文化圏からの離脱を意味するか?という問いが生まれる。アンビエント・ドローン以降のシューゲイザーを提示したLovesliescrushingはバンドという形式から完全に逸脱しているが紛れもないシューゲイザーである。Buddhas On The Moonの2007年作もそうだ。ハードコアパンクとの融合を果たしたNothingもサブジャンル上の命名こそあれ紛れもないシューゲイザーだ。ポスト・パンクの影響を受けているバンド群もそうだろう。Jefre-cantu Ledesma『Love is A Stream』もエクスペリメンタル・ミュージック以降のシューゲイザーとして考えられ、二つの圏を跨ってはいるが、シューゲイザーという文化圏から生まれた音楽と捉えられる。
他ジャンルに眼を向けると、例えばデスメタルの無数のサブジャンルは音楽性の違いを意味するが、大枠の文化圏という観点で検討すると同じ位相に属している。論拠としては弱いが、個人的に音楽の文化圏の形成としての核を成すものは、形式に寄らないある普遍的な要素、そしてそれを成す、散逸こそあれどこかで普遍を備えた、若しくは偏在する、審美眼と思想にあると考える。言い方を変えれば共有された一点だ。その考えが特定ジャンルのリバイバルという、単なる一過性の流行でもシーンの周期でも無い、そのジャンルの変貌と更新とモダナイズ、及び旧作への新しい眼差しを持った再評価を内包した必然的な、またはディガーと作家の情熱と相互作用に基づいた運動の基盤の一部を成しているのだろう。
つまりリバイバルは聴者側のある審美眼に基づいた収集と作家側に普遍的に備わった、若しくは偏在する美学と思想に基づいた作品の収集と体系化の相互性を持った運動なのである。特に、現行のニューエイジ・リバイバルにその考えが散見される。
そして、その概念を受容した聴者に、隣接する審美眼と思想を持った他ジャンルの作家への目配せが生まれるのは必然で自明であり、また、音楽の発展と拡張に伴う初期の形式からの逸脱も必然であり、他ジャンルとの融合以降のその審美と思想の提示も必然だろう。これは音楽の健全な発展の姿であり、例えばメタルという音楽が強くその傾向を見せ、若しくはその様な状況にある。ブラックメタルやデスメタルのサブジャンルの細分化やシューゲイザーとブラックメタルの蜜月であるブラックゲイズがまさにそうだ。
3.終わりに
恐らくジャンルについての認識についての平行線を辿る議論の背景に、ジャンル=文化圏=カルチャーという等式の認識が欠落している、もしくは(確かに便利ではあるが)単純にリスナーのディグの為のタグや枠組み、及びその背景にある単なる集合としてのシーンという認識を抱いてしまっているという不備があると思われる。
恐らく、それと私見ではあるが文化圏=カルチャーへの名付けであるという事はそこには聴者と作家が持つ審美眼と思想の相互反応、及び名の持つ力があると思われる。
ただ、正直ジャンルについてそこまで意識的にならない方が楽しい音楽ライフを送れると思うし、僕の文章は余談として受け取って下さるとありがたいです。ジャンルは単なるタグではなく文化圏の総称であり、リバイバルは一過性の流行ではなく再定義、再収集、更新、拡張というそのジャンルへの見方を一変させる審美眼と思想上の運動という事が言いたかっただけでした。
この絵画はサムネイル用です。

偏愛漫画50選
某ブログ記事に触発されて僕も好きな漫画を五十冊選んでみました。ナンバリングは順位では無く冊数のカウント用です。
永遠に続く回廊都市と人間のDNAの探求。ポストサイバーパンクの傑作。
異形バトルもの×ポスアポSFの傑作。氏の作品で一番作画が黒々しい印象。
ゾンビアポカリプスから宇宙へ。傑作。
4.弐瓶勉『NOiSE』
BLAME!の前日譚。主人公の死から復活へのカタルシスと悲愴な展開が凄まじい。
ギムナジウムものの傑作という認識。傷についての物語。
吸血鬼ものの漫画で恐らく一番好きな作品。失われる永遠の生。
入り組んだ時間SFであり滅びた文明へのノスタルジーも感じる。好きな作品。
8.萩尾望都『半神』
萩尾望都の中短編だと今作収録の「エッグスタンド」が特に好き。暗殺者を巡る悲劇でラストの一頁はこの作家の描写の中でもベスト級だと思う。
9.大島弓子『ダリアの帯』
脳の器質的疾患から永遠の妖精に変貌する主人公の妻を描いた表題作が凄まじい。
死んだ恋人が天使になって帰ってくる話が好き。「ごめんね。冠を取りにきたよ。」
12.市川春子『虫と歌』
疑似家族の喪失を描いた表題作が市川春子の短編の個人的なベスト。
https://www.amazon.co.jp/虫と歌-市川春子作品集-アフタヌーンKC-市川-春子/dp/4063106179
13.市川春子『25時のバカンス』
ある種衒学的とも言える台詞回しが秀逸。
自ら滅びに向かう主人公、そしてその道義的な裏付けが行われている所が好き。
15.模造クリスタル『ミッションちゃんの大冒険』
同人漫画の傑作。憂鬱と晴れやかさ、最後のテロリズム。
16.模造クリスタル『スペクトラルウィザード』
追放された者の憂鬱と群像劇。面白くて何度も読んでる。
https://www.amazon.co.jp/スペクトラルウィザード-模造クリスタル/dp/4781615694
17.西岡兄妹『この世の終りへの旅』
カフカ的不条理、土着の神話、殺人、処刑が渦巻く暗黒譚。傑作。
https://www.amazon.co.jp/この世の終りへの旅-西岡兄妹/dp/4883791459
18.西岡兄妹『救済の日』
資本主義に対する強烈な風刺と批判。そこから辿り着く死後の世界。
https://www.amazon.co.jp/救済の日-西岡兄妹/dp/4883792714
カフカの短編のコミカライズ。作画が美しい。
https://www.amazon.co.jp/カフカ-《Classics-Comics》-西岡兄妹/dp/4863322399
カタストロフに雪崩れこむ闘争劇。ラストシーンが美しい。
耽美で綿密な作画だけでも大好物。
https://www.amazon.co.jp/コペルニクスの呼吸-1-F×COMICS-中村-明日美子/dp/4872336496
特殊な技法で描かれたサドを彷彿とさせる表題作が好き。他の短編も良かった。
https://www.amazon.co.jp/祈りと署名-ビームコミックス-森泉岳土/dp/404729277X
23.なるめ『ILY.』
ドットで描かれる90年代へのオマージュ。Lainなどのサイバーパンクの気配が濃厚で、そのホラー的側面を継承している。
https://www.amazon.co.jp/ILY-アイリ-1-芳文社コミックス-FUZコミックス/dp/4832238167
死への緩急とスピード。有名なシーンが残酷で象徴的。
25.原百合子『繭、纏う』
髪に対する強烈なフェティシズム。作画が耽美。
https://www.amazon.co.jp/繭、纏う-1-ビームコミックス-原百合子/dp/4047353191
26.椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』
ゴーストストーリーから呪術的でオカルティックな展開に雪崩れこむ最高の作品。現行の漫画だとベスト級に好き。
https://www.amazon.co.jp/青野くんに触りたいから死にたい-1-アフタヌーンKC-椎名-うみ/dp/4063882721
コミカルで可愛い。好きな作品。
https://www.amazon.co.jp/乱と灰色の世界-1巻-BEAM-COMIX-入江/dp/4047261459
28.入江亜季『北北西に曇と往け』
ミステリー仕立てのストーリーと美しい画風。
29.五十嵐大介『魔女』
30.五十嵐大介『ディザインズ』
思弁的で幾つもの要素を示唆する台詞回しも画風も素晴らしい。近年の傑作。
31.岡崎京子『リバースエッジ』
決して恋愛に至らない、タナトスの気配の濃厚な群像劇。美しい作品。
https://www.amazon.co.jp/リバーズ・エッジ-Wonderland-comics-岡崎-京子/dp/4796616691
セカイ系のクラシックで個人的に思い入れのある作品。淡い絵柄が好き。
ポスアポSF×日常系。小説の『渚にて』を思い出した。
34.丸尾末広『笑う吸血鬼』
丸尾末広の描く吸血鬼。暗澹と耽美。
35.丸尾末広『パノラマ綺譚』
幻想ミステリ×ピカレスク。ラストシーンが素晴らしい。
植民地問題や階級社会を扱うSFサーガ。傑作。
37.西尾雄太『水野と茶山』
愛の幻想の欠落した百合物語。傑作。
https://www.amazon.co.jp/水野と茶山-上-ビームコミックス-西尾-雄太/dp/4047358584
https://www.amazon.co.jp/蟲師-アフタヌーンKC-255-漆原-友紀/dp/4063142558
39.伊藤潤二『うずまき』
象徴的なうずまきの恐怖。中学生の頃に読んで衝撃を受けた記憶。
https://www.amazon.co.jp/うずまき-ビッグコミックススペシャル-伊藤-潤二/dp/4091832423
ホラーとしてのファムファタル像。怖いのに惹かれてしまう。
41.須藤真澄『どこか遠くの話をしよう』
南米山岳地帯の少女と未来のディストピアから来た男の交錯点。異色作。
42.久井諒子『竜のかわいい七つの子』
珠玉の短編集。美しいアイデアと画風に魅了される。
43.久井諒子『ひきだしにテラリウム』
同上。素晴らし過ぎる。
https://www.amazon.co.jp/ひきだしにテラリウム-九井諒子/dp/4781609481
44.森薫『シャーリー』
決して都合の良いファンタジーに溺れない画風とストーリー。それでも可愛い。
鬱漫画というサブジャンル(?)を始めて認識した作家。ブラックユーモアと諧謔。
https://www.amazon.co.jp/ねこぢる大全-上-ねこぢる/dp/4163706801
ある種ポスアポ的な時間SFの王道を行くストーリー。ヒューマニズムで完結させるのは氏の作品らしい。
坂口安吾の中編小説のコミカライズ 。美しい解釈と淡い画風。
https://www.amazon.co.jp/桜の森の満開の下-岩波現代文庫-坂口-安吾/dp/4006022948
不条理ギャグマンガの傑作。小ネタも面白い。
https://www.amazon.co.jp/ハルシオン・ランチ-1-アフタヌーンKC-沙村-広明/dp/4063106365
ネオ時代劇という看板に偽りない傑作。
https://www.amazon.co.jp/無限の住人-1-アフタヌーンKC-沙村-広明/dp/4063140903
50.三ヶ嶋犬太朗『踊るリスポーン』
何度死んでも甦る少年とヤンデレゴス少女との恋愛譚。絵柄がポップで良い。
https://www.amazon.co.jp/踊るリスポーン-1-ヤンマガKCスペシャル-三ヶ嶋-犬太朗/dp/4065157463
・収まり切らなかった作品。
石黒正数『天国大魔境』
著者の過去作から見ると異色なディストピアSF。面白い。
鶴田謙二『冒険エレキテ島』
幻想の島への浪漫。猫が可愛い。
小西明日翔『来世は他人がいい』
危なめの恋愛譚。ノワール映画などが好きなのでアフタヌーン本誌で欠かさず読んでいる。
新海誠作品の秀逸なコミカライズ。繊細な絵柄が好き。
田邊剛『アウトサイダー』
クトゥルフの漫画化と言うだけで惹かれてしまう。癖の強い画風が素晴らしい。
https://www.amazon.co.jp/アウトサイダー-ビームコミックス-田邊-剛/dp/4757735804
熊倉献『春と盆暗』
脱臼したユーモア。『ブランクスペース』を早く読みたい。
https://www.amazon.co.jp/春と盆暗-アフタヌーンKC-熊倉-献/dp/4063882349
能力バトルものであり、SFであり、セカイ系でもある傑作。小学生の頃に嵌った記憶がある。
https://www.amazon.co.jp/寄生獣(1)-アフタヌーンコミックス-岩明均-ebook/dp/B009KWUID8
高松美咲『スキップとローファー』
単純な甘さや二者関係に回収されない青春群像劇。最近のアフタヌーンの好きな作品。
https://www.amazon.co.jp/スキップとローファー-1-アフタヌーンKC-高松-美咲/dp/4065142091
地下へ向かう少年と少女。シビアでシリアスなストーリーが好き。
https://www.amazon.co.jp/メイドインアビス-1-バンブーコミックス-つくし-あきひと/dp/4812483808
伊図透『銃座のウルナ』
戦争の現実とその後の人生。著者の傑作だと思う。
写真はサムネイル用の近所の花。

Impavida & Vuur & Zijde / Split

Label : Lupus Lounge
Release : 2020/05/08
Track List
1,Vuur & Zijde / Zonnestorm
2,Vuur & Zijde / Zilt
3,Vuur & Zijde / Noordzee
4,Impavida / Gram
5,Impavida / Wahn & Stille
ニュージーランドを拠点に活動するアトモスフェリック・ブラックメタル・バンド、ImpavidaとVuur & Zjideの二者によるスプリットEP。デヴィッド・リンチやクローネンバーグの映画を彷彿とさせる悪夢的でダーティなサウンドが強烈なImpavidaと、Dead Can Dance直系のヴォーカルと幽玄な轟音が鮮烈なVuur & Zjideという対照的なバンドによる個人的に今年のスプリットだとベストな内容の音源。前述した通りDead Can Danceを彷彿とさせるリチュアルなヴォーカルから幽玄なアトモスフェリック・ブラックメタルに突入するVuur & Zijdeによる「Zonnestorm」で始まり、轟音とBlack Tapes for Blue Girlを想起するホーリーなクリーンパートを往還する「Noordzee」、悪夢の終わりに向かって暴走していく様なImpavidaによる「Gram」を迎え、どこかホラー的でカタストロフを感じる「Wahn & Stille」で幕を閉じる完璧な36分だった。まだ両者ともに単独でのEPもアルバムもリリースされていないので、今後の制作に本当に期待しながら待っている。
2020ベストメタル 25位~1位
25,Vuur & Zijde / Impavida / Split

ニュージーランド出身のアトモスフェリック・ブラックメタル・バンド、Vuur & ZjideとImpavidaによるスプリットEP。 Impavidaのデヴィッド・リンチの映画を彷彿とさせる様な悪夢的な感覚もVuur & ZijdeのDead Can Dance直系のヴォーカルに幽玄なアトモスフェリック・ブラックメタルを被せた様な作風も素晴らしく、スプリットという形態だと今年のベスト。Vuur & Zijdeのフルアルバム若しくはEPが待ち遠しい。
24,Expander / Neuropunk Boostergang

Twitterで相互の方に教えて頂いた今年のスラッシュメタルの秀作。パンクで荒々しい感覚とスラッシュメタルのスピードが同居していて正直チープだと思っていたスラッシュメタルについての認識が一変した。今後も愛聴するであろう作品。
23,Rebel Wizard / Magickal Mystical Indifference

オーストラリアを拠点に活動するスラッシュメタル・バンドによる4thアルバム。これもTwitterで知った音源。「Mind is not Your Friend」の強烈なリフとこの辺のメタルには珍しいハイファイな録音、全編を通じて感じる魔術的なテーマに撃ち抜かれた。名盤。
22,Liturgy / Origin of the Alimonies

NYを拠点に活動する前衛ポストブラックメタル・バンドの最新作。基底となるポストブラックメタルとメシアン、フリーインプロヴィゼーション、フリージャズ等の要素が混然一体となった様な内容でぶっ飛んだ一枚。先行リリースの段階で凄かったがフルアルバムを聴いて完全にやられた。
21,Olhava / Ladoga

ロシア・サンクトペテルブルグのブラックゲイズシーンを拠点に活動するバンドの2ndアルバム。ブラックゲイズとして見ても強靭かつ瞑想的で素晴らしいし、ポストブラックとして見ても明らかにDeafheaven以降の音で優れた音源。サンクトペテルブルグシーンの層の厚さを思い知った一枚。
20,Benighted / Obscene Repressed

フランス出身のデスメタル・バンドによる12thアルバム。グラインドコア寄りのブルータルデスメタルというか、ダーティなサウンドと張り詰めたエナジーが共存する名盤。今年のデスメタルだとかなり回数を聴いた一枚。
19,Black Curse / Endless Wound

コロラドを拠点に活動するデスメタル・バンドによる1stアルバム。今年のブラッケンドデスメタルだと生え抜きの内容。徹頭徹尾RAWで邪悪と言うか、取り立てて変わった事はしていないのにサウンドだけで先鋭性を十分感じる内容。名盤。
18,Inexorum / Moonlit Navigation

アメリカを拠点に活動するブラッケンドデスメタルでありメロデスでもあるInexorumの1stアルバム。絶対零度のデスメタルと言うか、冷たいエナジーと緊張感、完成度の高い楽曲が素晴らしく何回でも聴ける音源。
17,Umbra Vitae / Shadow of Life

言わずと知れたConvergeのJacob Bannonが参加するデスメタル・バンドによる1stアルバム。全編通して最高と言う他無いが別バンドでもConvergeにある叙情性が見られるのが個人的に好感度が高かった。
16,明日の叙景 / すべてか弱い願い

日本を拠点に活動するポスト・ブラックメタル・バンドによる2ndEP。「青い果実」のシューゲイザー感が琴線に触れてリリース当初から聴き続けている。EPだと今年のメタルのベスト。
15,Tryptycon/ Requiem (Live At Roadburn 2019) [with Metropole Orkest]

秀逸なドゥームメタルのバンドとオーケストラの共作盤。『EPARISTERA DAIMONES』の段階で十分撃ち抜かれていたが、今作で完全に打ちのめされた。鎮魂がテーマに据えられた名盤。
14,Invictus / The Catacombs of Fear

OSDMが豊作な一年だったが、その中でも特に気に入った音源。乾いたサウンドと聴き込むと美しさを感じるリフワーク、暴走する展開に撃ち抜かれた。
13,Lebenssucht / -273,15°C

タイトル通りの絶対零度のデプレッシヴ・ブラックメタル。デプレにはある意味で似つかわしくない激情と沈鬱が交錯する内容で素晴らしかった。
12,Shagor / Sotteklugt

Bandcampで発見して嵌りに嵌った音源。荘厳なサウンドとネオフォーク由来だと思われる呪術的なコーラス、ゴスなコード進行が絡む内容でこういう音源を求めていたとしか言えない素晴らしさだった。重複するが、声の扱い方に全体的にネオフォークの影響が強くゴシック精神を感じた。「Nachtdwaler」が特に良かった。
11,Silver Knife / UNYIELDING / UNSEEING

ベルギーを拠点に活動するアトモスフェリック・ブラックメタル・バンドの1stアルバム。全体的に洗練されていて耽美な志向を感じるというか、ダーティな要素が無く聴き易かった。そうでありつつしっかり引っ掛かる内容というか、フックが効いていて最高の内容。
10,Winterfylleth / The Reckoning Dawn

イギリスを拠点に活動するアトモスフェリック・ブラックメタル・バンドの8thアルバム。凄まじく高クオリティなサウンドで毎回気が付いたら全編を聴き通していて驚いてしまう。王道を行くアトモスフェリック・ブラックメタル。
9,Imperial Triumphant / Alphaville

NYを拠点に活動するブラックメタル・バンドの4thアルバム。基底を成すダーティなブラックメタルの要素と19世紀末の退廃やロマン、フリージャズの影響が混在する内容で嵌りまくった一枚。旧譜も全て聴いてしまった。
8,Unreqvited / Mosaic II: La Deteste et La Detresse

詳細が謎に包まれたアトモスフェリック・ブラックメタル・バンドによる5thアルバム。全体的にブラックゲイズやアンビエントに接近した内容で、元々抱えていた耽美な志向に強く向かっている印象を受けた。名盤。
7,Esoctrilihum / Eternity of Shaog

フランスを拠点に活動する独りアトモスフェリック・ブラックメタル・プロジェクトによる3rdアルバム。神秘主義的な思想性と激情迸る轟音が渦巻く内容で凄まじかった。随所に挿入されるクリーンパートが耽美。
6,Ov Shadows / I Djavulens Avbild

スウェーデンを拠点に活動するアトモスフェリック・ブラックメタルのバンドによる2ndアルバム。最初から最後までハイボルテージに疾走する内容と言うか、轟音渦巻く内容で素晴らしく今年かなり嵌った音源。Bandcampの収穫。
5,Turia / Degen van Light

ニュージーランドを拠点に活動するアトモスフェリック・ブラックメタル・バンドによる3rdアルバム。 自然崇拝と残酷さが入り混じる様な内容というか、乾いた轟音とブルータルなデスヴォイスに完全にやられた一枚。
4,Karg / Traktat

Harakiri for The Skyのヴォーカルによるアトモスフェリック・ブラックメタル・プロジェクト。Alcest等を彷彿とさせる耽美な要素や沈鬱が散りばめられた内容で正直Harakiriより好きな内容だった。旧譜と比較するとブラックメタル固有の毒気が薄れたようにも聴こえ、ポストメタル的にも感じた。
3,Wake / Devouring Ruin

アトモスフェリック・ブラックメタル×グラインドコアと言えば良いのか、張り詰めた緊張感と血が迸る激情が同居している内容で、今年の周辺ジャンルの音源でも特にぶっ飛んだ音源。グラインドコアと相反する様な荘厳さも感じた。
2,Mare Cognitum & Spectral Lore / Wanderers: Astrology of the Nine

アトモスフェリック・ブラックメタルの優れたアーティスト二者による共作盤。惑星を巡るコンセプトアルバムで、全体的に緊張感に満ちていて特にMare Cognitumの楽曲が素晴らしかった。擬人化された火星への恐怖心を表現した「Mars (The Warrior)」が個人的なベストトラック。
1,Golden Ashes / In the Lugubrious Silence of Eternal Night

Gnaw Their TonguesのMaurice de Jongによるアトモスフェリック・ブラックメタル名義の2ndアルバム。キリストの磔刑から救済と復活を伴わない死までを扱ったコンセプトアルバムであり、ギターの代わりに強靭なシンセが配置された荘厳で美に没入する様なアトモスフェリック・ブラックメタル。今年一番愛聴したメタルの音源。
