Music for Orphans

音盤収集記。

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ベストディスク2021 50~1

今年も良い音楽に恵まれた素晴らしい一年でした。筆者の体力不足で画像とコメントは二十位からになります。ご了承下さい。 50.Alice Gift / Alles ist Gift cymbelinerecords.bandcamp.com 49.Saint-Léon / Signs of Saint Léon 2016-2019 saint-leon.bandca…

核、審美、思想──音楽の収集とそれ以降のリバイバル

0.初めに この一連の文章では、様々な議論を生みがちな音楽ジャンルという概念を先ず個人的に定義し、それを前提に聴者と作家の相互関係によって起きるリバイバルという現象について記述し、その上でシューゲイザー、つまり単なる形式に留まらず、それ以降の…

偏愛漫画50選

某ブログ記事に触発されて僕も好きな漫画を五十冊選んでみました。ナンバリングは順位では無く冊数のカウント用です。 1.弐瓶勉『BLAME!』 永遠に続く回廊都市と人間のDNAの探求。ポストサイバーパンクの傑作。 www.amazon.co.jp 2.弐瓶勉『ABARA』 異形バト…

Impavida & Vuur & Zijde / Split

Label : Lupus Lounge Release : 2020/05/08 Track List 1,Vuur & Zijde / Zonnestorm 2,Vuur & Zijde / Zilt 3,Vuur & Zijde / Noordzee 4,Impavida / Gram 5,Impavida / Wahn & Stille ニュージーランドを拠点に活動するアトモスフェリック・ブラックメタ…

2020ベストメタル 25位~1位

25,Vuur & Zijde / Impavida / Split ニュージーランド出身のアトモスフェリック・ブラックメタル・バンド、Vuur & ZjideとImpavidaによるスプリットEP。 Impavidaのデヴィッド・リンチの映画を彷彿とさせる様な悪夢的な感覚もVuur & ZijdeのDead Can Dance…

ベストディスク2020 50位~1位

50,Mrs. Piss / Self-Surgery Chelsea Wolfeを中心に据えたゴスど真ん中なグランジ・プロジェクト。強烈な情念とゴシック精神、90'sグランジへの偏愛に撃ち抜かれる内容で今年一年愛聴していた。というかゴシックなグランジというだけで大好物。ソロ名義でい…

地域別に見るブラックゲイズ

この記事ではブラックゲイズのバンドを地域別に纏めていこうと思います。単なるリスナーの個人的見解に過ぎないので間違いや不備など多々あるかと思われます。ご容赦下さい。 ・ブラックゲイズのシーンと辺境での点在 ヨーロッパ、フランス、アメリカ、中国…

シューゲイザーについての私的雑感とレビュー

この記事ではシューゲイザーについての個人的な雑感とレビューを綴っていきたいと思います。単なる一シューゲイザーリスナーの見解に過ぎないですし、歴史を体系的に纏める為の記事でも無いので抜けや不備、間違いが多々あると思われます。悪しからず。 ・初…

ポストパンクについての私的雑感とレビュー

この記事ではポストパンクについての私見と個人的に気に入っているアーティストのレビューを綴っていこうと思います。傾向としてはゴシックなアーティストを列挙するつもりです。素人の個人的嗜好に沿った見解と選択であり、体系的に歴史を纏める為の記事で…

Endless Dismal Moan / ST

国産スーサイダル・ブラックメタル。 Araquel辺りのロウ・ブラックメタルに通じる神秘性を抱えた陰惨なリフワークと希死念慮を吐き出す様なスクリームに感じる暗い光明はアルトーが語るペストの力=悪の強烈な光の様なものだろうか。個人的な国産ブラックメタ…

ダークウェーヴについての個人的雑感とレビュー

本記事では個人的なダークウェーヴについての雑感と気に入っているアーティストについて言及していこうと思います。体系的に歴史を纏める為の記事では無く、入門編ですら無い素人の所見ですので各所に抜けや不備、間違いがあると思われます。悪しからず。 ・…

春日井建 / 未青年

「大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき」 「空の美貌を恐れて泣きし幼児期より泡立つ声のしたたるわたし」 「唖蝉が砂にしびれて死ぬ夕べ告げ得ぬ愛に唇渇く」 「太陽が欲しくて父を怒らせし日よりむなしきものばかり恋う」 「くちびるを…

Grouper / Grid of Points

安息と傷の修復、祈りと瞑想。初期の華やかな祭儀的音楽より現在のGrouperの方が好きかもしれない。 Grid of Points Grouper オルタナティブ ¥1375 music.apple.com

デューナ・バーンズ / いとわしき女たちの書

「たとえあなたを捕え、宇宙から引きずりおろしても その脚がレースの布にからみついて動きが取れなくなったとしても あなたはくちづけで世界を狂わせるのだから うつぶせの姿でも。」 「草の上のあなたの体を見つめる 涼しく淡いまなざし。懸命にあの物憂い…

Lucid and The Flowers / Recapture

「Love is Blind」という楽曲に眩暈と陶酔を覚えた。ヴィジュアル系やジャズの影響と60年代への憧憬を高い次元で昇華したどこか不穏で退廃性の漂う優れたドリーム・ポップ。メランコリーと妖しさ、愛の喪失と再生。 RECAPTURE - EP Lucid And The Flowers オ…

Joy Divisin / Closer

イアン・カーティスの死後発表された2ndアルバム。Unknown Pleasuresよりゴシック性と陰鬱さ、歌詞の内省性と文学性が際立ち、深化という言葉で片づけたくは無いがバンドの音楽性がより優れたものになっているのが伺える。特に「24 Hour」、「The Eternal」…

Thomas Méreur / Dyrhólaey

現世から離れた旋律とエセリアル性。Grouperに通じるものを感じる。 Dyrhólaey Thomas Méreur シンガーソングライター ¥1528 music.apple.com

Levi Patel / Affinity

透徹したトーンと暖かな楽曲を併せ持ったネオクラシカル的なポストロック。ストリングスとベル、シンセサイザーと讃美歌の様なコーラスの採用と抒情的なギターの旋律が美しい。非ロック的な楽器というか、ストリングスが採用されたポストロックと言うとGY!BE…

Christoph Heemann & Andreas Martin – Lebenserinnerungen Eines Lepidopterologen

何度聴いたか分からない、クリシュトフ・ヒーマンとアンドレアス・マーティンが創り上げたシュールレアリスティックで幻想的な名盤。Die Sagenhaften Huhnerでのアンドレアス・マーティンの美しいガットギターとヒーマンの透徹、幽玄かつシュールレアリステ…

高橋睦郎 / 待たな終末

「いつかヒト滅び世界も滅ぶればわが言葉いまを輝き滅べ」 「幼な子に世界は言葉 言葉なる世界のめぐり動くもろもろ」 「言葉なる世界と世界なる言葉その鬩ぎにし訪ひこしか詩は」 「沈黙より言葉生まるる草や木の木の影より光現るるさながら」 「七十億滅び…

アンドレイ・タルコフスキー / ノスタルジア

緑と青、モノトーンが印象的な映像美と宗教的で暗鬱なストーリー。ノスタルジーを象徴する静止画と壮麗な廃墟が美しい。膝まで浸す水が印象的な少女に弁を振るうシーンの破れかぶれな感情。昔の知人の意見だが、自殺のシーンでドミニクが流す第九と演説と自…

Mark Fry / Dreaming With Alice

アシッドフォークファンには言わずと知れたMark Fryの1stであり傑作。どこまでも優しい幻想的アシッドフォーク。ジャケットに映っている少女に子守唄の様に繰り返し聴かせるために、Dreaming With Aliceを繰り返し録音したというエピソードがあるらしい。再…

鷲巣繁男 / 鷲巣繁男詩集

「やがて果樹園を吹き抜けた夜が、伽藍の空洞に化石になるのを待つてゐる天使らを包むとき、蜥蜴の夢だけが、この世の連帯の虹色をステンドグラスに燃やすだらう。」(死者たちへの手帖) 「遠くで角笛がする。羊たちが目覚めるころだ。そして、わたしは凡ての…

塚本邦雄 / 塚本邦雄全集一巻

「くりかえし翔べぬ天使に讀みきかす 白葡萄醒酸製法秘傅」 「湖の夜明け、ピアノに水死者のゆびほぐれおちならすレクイエム」 「てのひらの傷いたみつつ裏切りの季節にひらく十字科の花」 「夜のつぎにくるはまた夜、かなしげな魚の眼の中に燈ともせ」 「翅…

浦邊雅祥 / 我は聖代の狂生ぞ

ロートレアモンの影響を感じる優れた日本のインプロヴィゼーション。所謂ゴスでは無く、文学由来の本来的なゴシック性を感じる。間の感覚と透き通ったアルトのトーン、鎖を鳴らす音ですら表現に変える表現力が素晴らしいと思う。十代の頃愛聴していた。1stLP…

ジャン・リュック・ゴダール / 勝手にしやがれ

徹頭徹尾秩序を無視するアナーキーな主人公の存在とピカレスクの王道を行くストーリー展開に救われ、陰鬱な気分が消え去った。気分が塞いだら勝手にしやがれを観る事にしてる。

タル・ベーラ / サタンタンゴ

黙示録性とディストピア性、ハンガリー社会の寓話としての物語。劇中で実際に黙示録が提示される。 ラストの存在しない教会の鐘の音と医師のモノローグが被さるシーンが美しい。教会の鐘の音とダーク・アンビエント、白痴めいたタンゴ以外の劇中音楽は存在し…

フリオ・コルタサル / 対岸

「今や彼女にはすべて、すべてが可能なのだ。世界は彼女のものなのだから、その気にさえなれば。だが、恐怖と臆病が彼女の喉を締め付ける。魔女、魔女。魔女が行きつくのは地獄。」