Lucid and The Flowers / Recapture
「Love is Blind」という楽曲に眩暈と陶酔を覚えた。ヴィジュアル系やジャズの影響と60年代への憧憬を高い次元で昇華したどこか不穏で退廃性の漂う優れたドリーム・ポップ。メランコリーと妖しさ、愛の喪失と再生。
Joy Divisin / Closer
イアン・カーティスの死後発表された2ndアルバム。Unknown Pleasuresよりゴシック性と陰鬱さ、歌詞の内省性と文学性が際立ち、深化という言葉で片づけたくは無いがバンドの音楽性がより優れたものになっているのが伺える。特に「24 Hour」、「The Eternal」、「Decades」と続けて聴くとバンドのゴシックかつ退廃的、それでいて審美眼に優れた透徹した美学が伺える様に思う。「24 Hour」の陰鬱さとダークな高揚感が同時にある感覚が個人的な聴き所。ジャケットの写真はイタリアのアッピアーニ墓所で撮影されたものらしい。
「全てが上手く行かない事に気づいた。新しい治療法を見つけなくちゃいけない。この治療法には時間が掛かりすぎる。シンパシーに支配された心の奥底で、手遅れになる前に私の運命を見つけてくれ。(24 Hour)」
Thomas Méreur / Dyrhólaey
現世から離れた旋律とエセリアル性。Grouperに通じるものを感じる。
Levi Patel / Affinity
高橋睦郎 / 待たな終末
「いつかヒト滅び世界も滅ぶればわが言葉いまを輝き滅べ」
「幼な子に世界は言葉 言葉なる世界のめぐり動くもろもろ」
「言葉なる世界と世界なる言葉その鬩ぎにし訪ひこしか詩は」
「沈黙より言葉生まるる草や木の木の影より光現るるさながら」
「七十億滅びこの星滅びなばそを記憶せむぬばたまの闇」
「黙示録その騎士四人わが裡の四方にこそ吹け滅びの喇叭」
「極小の神分裂し増殖しわれら逃げ惑う七十億のわれら」
「眞夜を讀む人眠らせぬ一語だにわが詩にあらば眠らむを永遠に」
「旅を行く星を産み呑みぬばたまの闇の洞こそ旅行け永遠に」
「十字架の根やいづちより土深く眠るアダムがされかうべより」
「終末をむしろ嘉せむ吾と汝の差別の因も果も消失すれば」
「夜の終り呼ばはる聲す二千年前ユダヤの荒野より」
「終末はそも何処より無の子なるわれらが裡の深き淵より」
「審判の日に立ちあがるあやつりの糸の繋げし骨のつらなり」
「世の終り未だしとせば世の人のひとりひとりの終りいかにぞ」
「風かよふ水垂り洞に葬りたる屍腐るは疾く骨となる」
「肉-骨に 骨-水に 水-風に 無に ただに明るし 後生の時間」
アンドレイ・タルコフスキー / ノスタルジア
緑と青、モノトーンが印象的な映像美と宗教的で暗鬱なストーリー。ノスタルジーを象徴する静止画と壮麗な廃墟が美しい。膝まで浸す水が印象的な少女に弁を振るうシーンの破れかぶれな感情。昔の知人の意見だが、自殺のシーンでドミニクが流す第九と演説と自殺の関係が興味深い。第九のテーマである天上の世界を目指す為の同胞への呼びかけ、同胞愛とドミニクの世界救済のための同胞への呼び掛けを同期させているとの事。音楽をBGMとして消費せずにテーマ性と作品を同期させるという監督の哲学があるらしい。主人公が強く捕らわれているノスタルジーは監督のノスタルジーの投影なのか?冒頭と終劇のロシア民謡はOI VI KUMSCIKIと言うらしい。劇中の犬はストーカーの犬と同じ犬なんだろうか。蛇足というか下らない話だが、1+1=1と言う妄執を表す数式を見てRadioheadの2+2=5を思い出した。元ネタだったりするのだろうか。